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2007/04/27

福音館書店から(第62回)

 3月初めから「こどものとも傑作集」の新規製版について連載でお伝えしてきましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。
 今回の連載はこれをもちまして終結し、このブログの更新はしばらくお休みをいただきます。
 以前お知らせしましたように、これから5月末までのあいだ、「こどものとも50周年記念ブログ」をこのブログの中に移行する作業に入り、6月はじめからは、この「福音館子どもの本ブログ」も再スタートを切ることになります。

 さて、新規製版についてはまだお伝えしたいことはいろいろあるのですが、第1期15冊がすでに発売されておりますので、是非手にとってご覧いただければと思います。本の背表紙の下の方に「こどものとも絵本」あるいは「ぐりとぐらの絵本」と書いてあるのが、新規製版の絵本です。(新規製版の絵本では背に作者の名前も入れました)
 説明が後になってしまいましたが、「ぐりとぐら」のシリーズは、これまでの「こどものとも傑作集」から独立させ、「ぐりとぐらの絵本」というシリーズになりました。

 ここで今後の新規製版の予定をお知らせしておきます。時期はまだ未定ですが、来年の3月末までに完結の予定で作業を進めています。これから出る23冊の書名は次のとおりです。

第2期(12冊)
かばくん  岸田衿子 作/中谷千代子 絵
たろうのおでかけ  村山桂子 作/堀内誠一 絵
だるまちゃんとてんぐちゃん  加古里子 作・絵
しんせつなともだち  方 軼羣 作/君島久子 訳/村山知義 画
かさもって おむかえ  征矢 清 作/長 新太 絵
だるまちゃんとかみなりちゃん  加古里子 作・絵
とこちゃんはどこ  松岡享子 作/加古里子 絵
ちいさなねこ  石井桃子 作/横内 襄 絵
三びきのこぶた  瀬田貞二 訳/山田三郎 画
だるまちゃんとうさぎちゃん  加古里子 作・絵
こぶじいさま  松居 直 再話/赤羽末吉 画
くるまはいくつ  渡辺茂男 作/堀内誠一 絵

第3期(11冊)
かさじぞう  瀬田貞二 再話/赤羽末吉 画
かばくんのふね  岸田衿子 作/中谷千代子 絵
ぶたぶたくんのおかいもの  土方久功 作・絵
くろうまブランキー  伊東三郎 再話/堀内誠一 画
ジオジオのかんむり  岸田衿子 作/中谷千代子 絵
か わ  加古里子 作・絵
ばけくらべ  松谷みよ子 作/瀬川康男 絵
きつねとねずみ  ビアンキ 作/内田莉莎子 訳/山田三郎 絵
ゆうちゃんのみきさーしゃ  村上祐子 作/片山 健 絵
おばあさんのすぷーん  神沢利子 作/富山妙子 絵
たろうのともだち  村山桂子 作/堀内誠一 絵

4月 27, 2007 福音館からのお知らせ | | コメント (1) | トラックバック (0)

2007/04/20

福音館書店から(第61回)

新規製版を可能にした原画の保管
                            福音館書店 月刊誌編集部長 森達夫

 宮城県美術館の、防火と空調の管理が行き届いた収蔵庫で、部屋一面の棚に組み込まれた桐箱から次々と出していただく「ぐりとぐら」、「おおきなかぶ」、「しょうぼうじどうしゃ じぷた」「ふるやのもり」・・・。かつて30年も40年も前に画家が精魂込めて描かれ、絵本として刊行されたあとは子どもたちの宝物になったあの作品の原画です。いまはこうやって手厚く収蔵されているさまに、身が引き締まる思いがしました。原画に添えられた、歴代の編集者の、原画の再現性を高めるための製版指示や留意事項のメモまでもが一緒に保存されています。
 描かれたのは、画家自身もまだお若かった時代です。ほとばしる創作の意欲を画面に込めてくださりながらも、決して十分ではない経済的な背景から、画材や用紙をいまのような高品質なものを利用することは困難でした。
 たとえば、「ふるやのもり」の原画は、絵本作家田島征三さん青年時代の、絵本第一作です。耐水性のない薄ベニヤ板(田島さんは、「だれもが貧しかったころで、選挙が終わった後に街角に捨てられているポスター用のベニヤ板を画材に使った」と述懐しておられます)に和紙をはっただけの画面や、薄紙を高価な製版フィルムベースに見立てて使用した画面がありました。これらを、宮城県美術館では大きな労力と経費を使って修復保存につとめてこられました。そのご努力によりすばらしい保存状態にあるものを借用できて、今回の新規製版が実現しました。
 「子どもに向けた文化財を最高の技術で保存し、将来に向けて末永く劣化させない手法で子どもたちに手渡しつづけたい」という私どもの新規製版事業が、子どもの文化をになう多くの方々や団体に支えられている、見守られている、と強く感じました。
 第一期では15作品中の12作品が宮城県美術館収蔵品です。このあと刊行を予定しています第二期、第三期でも多くの作品をお借りします。大きなご協力をいただいています宮城県美術館の有川幾夫さんより一文をいただきました。

4月 20, 2007 福音館からのお知らせ | | コメント (0) | トラックバック (0)

「こどものとも」の原画と宮城県美術館

                             宮城県美術館 学芸部長 有川幾夫

 「おおきなかぶ」や「ぐりとぐら」をはじめ、長く愛されてきた絵本がデジタル技術による製版もあらたに、最初の15冊が刊行されました。その中で最後の奥付に「新規製版協力 宮城県美術館」と記していただいたものが12冊あります。絵本の出版に美術館がどんな関係があるのだろうと思われた方もいるかもしれません。そのことについて少しご説明しながら、美術館についてもあらためて知っていただくことがあれば幸いです。

Photo_4  一人の画家や決められたテーマに沿って作品を集めた特別展。またはいつでもそこに行けば決まった作品を見ることができる常設展。どちらにしても美術館というのは絵や彫刻を見るところというのが一般的なイメージだと思います。けれども美術館にはもうひとつ大事な役目があります。それはすぐれた美術作品を未来に残していく仕事です。
 ところで絵本制作のために描かれた原画は、その後どうなるのでしょう。現在では作者のもとにお返しするのが普通のようですが、ずっと以前は絵本ができあがると原画の役目も終わったということで、あとは顧みられない時代もあったそうです。けれども「こどものとも」を創刊した松居直さんは、作者の了解を得て福音館書店に原画を大切に保管してきました。そうして保管されてきた原画の多くが、原画の作者の方々の理解と協力を得て宮城県美術館のコレクションになりました。

Photo_5  宮城県美術館が初期の「こどものとも」の原画を中心に絵本の原画を収集し保存していこうと決めたのには、ひとつのきっかけがありました。それは宮城県美術館の「美術館講座」で松居さんに絵本についてのお話をしていただいたことでした。講座のあと、松居さんは絵本原画の将来的な保存の必要性について述べられたのです。これをうけて宮城県美術館は検討を重ね、その結果、絵本の原画の収集保存に取り組むことに決めました。現在では9,000枚以上の絵本原画を収蔵しています。
 その意味は大きくふたつありました。ひとつは絵本とはまた別に、絵画それ自体としての魅力。それを美術館の来館者に公開する。もうひとつは将来、再刊や新規製版の必要が生じたときに、そのオリジナルが残されていなければなりません。その保存に美術館のノウハウを生かせるのではないかと考えたのです。
 今回の新規製版にあたって宮城県美術館は何か技術的な寄与をしたというわけではありません。美術文化と出版文化にまたがるような絵本原画を将来に向ってまもり、いつでも公開や研究や出版が可能な状態を維持すること。それが私たちの仕事なのです。

 絵本原画の整理はまず絵本との照合からはじまります。絶版の場合は図書館などで確認します。ページ数の都合や文字との関係から、使われていない原画があったり、原画と絵本で少し配置が違う場合もあります。次は現状の記録。画面だけが残ればよいのではありません。作者の書き込みや編集上の指示なども保存したり記録したりします。それから採寸、撮影などなど。長い間に傷んでしまったものは修復の必要もあります。
 絵本原画の特徴は何でしょうか。そのひとつは素材の自由さです。洋画といえば油絵具、日本画といえば岩絵具という具合に、ジャンルが決まった絵には素材にもそれぞれの約束があります。ところが絵本にはそういう決まりはありません。色鉛筆やマジックインクだってオーケー。大事なのは絵本になったときの効果なのですから、思い切った冒険が可能です。それが絵本原画の面白いところでもあるのですが、困ったこともあります。自由度と引き換えに長期の保存性は必ずしも考慮されていない場合もあるのです。たとえばマーカー。明るいところに展示したらあっという間に色がさめてしまいます。保存と公開のバランスというのは美術館にとっては永遠のテーマですが、絵本原画には特にデリケートなものが多いといえます。絵本の本領は、絵と文に加えて印刷や製本の技術などが総合された絵本そのものにあります。各地で絵本原画展が盛んですが、文化財として残すべき絵本原画には展示にもそれなりの制約や配慮が必要になるでしょう。宮城県美術館は総合的な近代美術館としての立場から、これからも絵本原画に携わっていきたいと考えています。

◎写真はいずれも現在宮城県美術館で開催されている「ぐりぐらとなかまたち―山脇百合子絵本原画展」の会場の様子です。この原画展は次のとおり行われています。

Photo_7 ぐりとぐらとなかまたち 山脇百合子絵本原画展

出品作品  『ぐりとぐら』『そらいろのたね』『ゆうこのあさごはん』『ぐりとぐらの1ねんかん』『ぐりとぐらとすみれちゃん』をはじめ、23作品約320点。

会場 宮城県美術館
    宮城県仙台市青葉区川内元支倉34-1 
開催期間 2007年4月14日(土)~6月3日(日)
問合せ先 TEL022-221-2111
       http://www.pref.miyagi.jp/bijyutu/museum/
開館時間 9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜日(4月30日を除く)
入館料 一般800円(700円)、大学生400円(300円)、高校生以下は無料
    ※( )内は20名様以上の団体料金。

4月 20, 2007 新規製版について | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/04/13

福音館書店から(第60回)

 今回の新規製版では、現在もご活躍中の作者・画家の皆様に、校正作業でご協力いただいています。何十年も前に描かれた原画を前に、作者・画家の方々もさまざまな思いをもたれたことと思いますが、今日はそんななかから、『ぐりとぐら』などの作者、中川李枝子さんと山脇百合子さんの作品にまつわる話を、編集担当者から伝えてもらいます。

 なお、ちょうど明日4月14日(土)より、次のとおり山脇百合子さんの原画展が宮城県美術館で開催されます。

ぐりとぐらとなかまたち 山脇百合子絵本原画展
出品作品  『ぐりとぐら』『そらいろのたね』『ゆうこのあさごはん』『ぐりとぐらの1ねんかん』『ぐりとぐらとすみれちゃん』をはじめ、23作品約320点。
会場 宮城県美術館
    宮城県仙台市青葉区川内元支倉34-1 
開催期間 2007年4月14日(土)~6月3日(日)
問合せ先 TEL022-221-2111
       http://www.pref.miyagi.jp/bijyutu/museum/
開館時間 9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜日(4月30日を除く)
入館料 一般800円(700円)、大学生400円(300円)、高校生以下は無料
    ※( )内は20名様以上の団体料金。

 宮城県美術館では「こどものとも」の古い原画を多数、収蔵し保管しており、今回の新規製版でもたいへんご協力いただきました。このことにつきましては、次回くわしくお伝えします。

4月 13, 2007 福音館からのお知らせ | | コメント (0) | トラックバック (1)

ますます元気! ぐりとぐらとなかまたち
『ぐりとぐら』『ぐりとぐらのおきゃくさま』『そらいろのたね』『たからさがし』

「そういうふうに描いてある…」
 この4作品の新規製版作業を開始したのは、昨年の春。中川李枝子さん、山脇百合子さんに来社していただき、初めての校正作業に立ち会っていただきました。当時の編集担当者だった松居直小社相談役とともに、原画と新規製版の校正刷を見比べていただきました。現在宮城県美術館に収蔵されている原画を、山脇さんが額装していない状態でじっくりご覧になるのは40数年ぶりのことです。
 山脇さんは、「私、こんなふうに描いていたのねえ」と当時を懐かしく思い出されながら話されました。「退色しているように思われますか?」とうかがうと、「どうかしら? 何しろ、家にあった学校で使っていたような絵の具で描いたのですからねぇ」といった具合で、校正作業は終始和やかに進みました。
 そんななかで、印象的だったのは「そういうふうに描いてあるんだし、そのままにしていいんじゃないかしら? だめかしらねぇ?」というご発言でした。いままでの版と新しい版との違いについて、いかがしましょうかとたずねたときのことです。
 40年前に作られたいままでの版では、当時の技術的な制約のため原画を再現しきれていませんでした。印刷所のレタッチマンが製版上の処理で原画に近付けようと試みていましたが、結果的に輪郭線の中に色がきっちりとおさまっていて、すっきりしているけれども、全体として平坦な印象でした。太い墨の輪郭線と調子の少ない濃いめの色彩で、はっきりとした形がストレートに目に飛び込んできます。一方新しい版では、輪郭線の上に色が重なっている部分や彩色の濃淡などがより細やかに再現されています。
 実はそのとき、私は中川さん、山脇さん作品の担当者として悩んでいました。『ぐりとぐら』は、発行から40年以上にわたって読まれつづけ、ハードカバー版だけでも390万部が世に送り出された作品です。いままでの本との印象の違いが読者の方々にどう受けとめられるだろうかと、一担当者として、また一読者として考えていたのです。
 そんな迷いが生じているとき、先の山脇さんのご発言にはっとしました。そうでした! 山脇さんが描かれたのでした! ここはこんな色……、ここはこうして……と、丁寧に細い筆の先を動かされたのは、山脇さんでした。大変遅ればせながら、画家の静かな強い意志を感じた瞬間でした。新しい版では、山脇さんのきらきらした眼差しや、きゅっと集中した息遣いまでが感じられるような、温かみのある心地よい絵が再現できたと思います。

Gurigura_old         Gurigura_new
『ぐりとぐら』 旧版より             『ぐりとぐら』 新版より

新規製版の絵本をご覧になって…
山脇さん:「いままでの本は、全体的にお行儀がよすぎたって感じね。今度の方が元気がいいわ」
中川さん:「(山脇さんのコメントを受けて)私も賛成! みんなに長い間読まれてうれしいわ。絵本を読んでもらえる子は本当に幸せ。まわりの大人と一緒に、みんな幸せなときを大切にしてほしいわね。子どもたちは絵本を読んでもらうときには、ただお話を読んでもらっているということだけじゃなくて、いろいろなものをもらっていると思うのよ。絵本を通してまわりの大人の愛情も伝わっていると思います。私は子どもたちの幸せをずっと願っていますよ」

思い出の絵本を、これから初めて出会う子どもたちへ
 私は、1970年代に「こどものとも」を熱心に読んでいた子どもの一人です。今回新規製版した作品は、どれも懐かしい思い出いっぱいの作品ばかりでした。40年以上も前に描かれた原画を目の当たりにすると、作者と編集者の、新しい絵本の創作にかける思いが伝わってきます。新規製版の作業の中では、画家だけでなく、作家に当時のことをお聞きし、作品世界を語っていただくこともありました。すでに他界された作者の方もいらっしゃって、新しくなった作品をご覧いただけないのは本当に残念なことです。画家がいちばん表現したかった色はどれか、お話の流れで重要な絵柄はどれかというように考えながら、印刷所の方々にご協力いただき丁寧に校正を重ねています。新規製版の絵本を、これから初めて出会う子どもたちに、そして思い出の本を誰かに読んであげたいと思っている方々にも、気に入っていただけるとうれしいです。

『ぐりとぐら』の“かすてら”の色について
 原画にあったかすてらの色は、意外にも薄い黄色でした。初版本刊行時に、より美味しそうに見えるよう黄色味と赤味を製版上で加えていたようです。また、そのあとの160回を越える重版で、色が微妙に変化していき、現行本ではやや強く濃くなっていることもわかりました。お二人と相談し、初版本の色に合わせることにしました。やはりかすてらは、「きいろ」く「ふんわり」と焼けていてほしいですよね!

描き下ろしの背表紙のカット、見返し、前扉について
 今回、背表紙と前扉(表紙を開いて2枚目、タイトルが再び出てくるページです)には、新たに山脇さんに描き下ろしていただいたカットが入っています。
ぐりとぐら』:背表紙のカットは、最初の森の場面でドングリやクリとともにみつけたキノコです。前扉のカットは、かごをもって森へ行くふたりの後ろ姿が美しい彩色でいっそうかわいらしくなりました。
ぐりとぐらのおきゃくさま』:背表紙のカットは、お茶会のイメージで、カップとソーサー。大団円のパーティーの場面で、ピアノの上にあるものと同じです。前扉のカットは、暖炉の前で読書中のぐりとぐらです。見返し(表紙のすぐ裏のページです)の色は、中川さんと山脇さんで、クリスマス・カラーの緑を選ばれました。
そらいろのたね』:背のカットは、でてきたばかりのそらいろの家。前扉のカットでは、きつねが何か言いたそうな顔をしてこっちを見ています。また、見返しには、山脇さんの発案でかわいいタンポポの絵柄を入れました。
たからさがし』:背表紙のカットは、うさぎのおばあちゃんの家の庭に咲いているきんぽうげの花です。今回原画を見てわかったことは、うさぎのおばあちゃんがとってもおしゃれだということ。グレーのチェックのワンピースに紺のエプロン、ワンピースの胸元についている赤いボタンがきいています。編みかけのセーターも同じ赤ですね。お部屋の小物もすてきなデザインです。いままでは全体的に色遣いが重い感じでしたが、原画の淡い彩色を再現することで明るい印象の絵本に変わりました。背の色は、山脇さんのご希望でゆうじの靴下の色のイメージに変更。見返しの白抜きカットは描き下ろしで、最初の場面に出てくる川原の土手とはらっぱのイメージです。本を開いてお話が始まる前と、終わって本を閉じる前に、この舞台劇の背景のような線描が読者の目にとまります。

Gurigura_tobira_old     Gurigura_tobira_new
『ぐりとぐら』 旧版扉                『ぐりとぐら』 新版扉

それからもうひとつこぼれ話を…
 『ぐりとぐら』の絵本をはじめお二人の作品の表紙は、作者名が「なかがわりえこ  やまわき(おおむら)ゆりこ」となっています。ふつうなら、「なかがわりえこ さく やまわきゆりこ え」というようにするところです。なぜでしょう。これはちょっとした謎でした。今回の新規製版の校正中、山脇さんが教えてくださいました。「これはね、私たちも『ぐりぐら』のまねをしたのよ!」

                                                                   福音館書店 月刊誌編集部
                                                                   「こどものとも」50周年企画担当
                                                                    八巻伸子

4月 13, 2007 新規製版について | | コメント (1) | トラックバック (1)

2007/04/06

福音館書店から(第59回)

 今回の新規製版は、これまで長い間子どもたちに愛され続けてきた絵本を、これからも出版しつづけるには、古くなった製版フィルムにかえてデジタル・データで保存しておく必要があるということが大きな理由のひとつでした。しかし、それは単に原画からデータを作成すればよいというだけの問題ではないことは、前回まで印刷会社精興社の小俣さんにくわしく語っていただいたとおりです。
 私たちは、それぞれの絵本が生まれた時代の制約でできなかったこと、今だったらこうすればよいと思うことをどんな小さなことでも改善し、今できる最高の形で、これからも長い年月子どもたちに喜んでもらえるように、今回の新規製版の事業に取り組んでいます。
 今日は小社制作課の担当者から、造本上の問題を中心にご案内します。

4月 6, 2007 福音館からのお知らせ | | コメント (2) | トラックバック (0)

絵本のすみずみまで――新規製版にあたっての造本上の工夫

 今回の「こどものとも」新規製版という取り組みにあたっては社内で新規製版チームを作り作業を進めてきました。私は制作課というセクションから、用紙、印刷、製本、加工などの制作面や、スケジュール管理などの担当として参加しています。

 製版については前回までに印刷会社精興社の小俣技術担当部長から非常に丁寧にご説明いただきましたので、私からは造本やレイアウトに関して細かいところでこれまでと変わったところをいくつかご紹介します。

【判型】
 月刊絵本の「こどものとも」は2006年3月号で創刊50周年(600号)を迎え、現在も毎月1冊ずつ新しい作品が誕生しています。途中、133号(1967年4月号)から寸法を少し大きくしていますので、これらをハードカバー化した「こどものとも傑作集」(今回の新規製版分から「こどものとも絵本」にシリーズ名が変わります)も、132号までの作品と133号以降の作品では少し大きさが違うのです。(132号までのものでも傑作集になってから版を新しくした際に大きくしたものもあります)

 新規製版第一期の15点の中では 『とらっく とらっく とらっく』(64号)、『だいくとおにろく』(75号)、『ゆきむすめ』(83号)、『しょうぼうじどうしゃ じぷた』(91号)、『ぐりとぐら』(93号)、『そらいろのたね』(97号)、『たからさがし』(104号)、『ふるやのもり』(106号)、『のろまなローラー』(113号)、『ぴかくん めをまわす』(127号)、『ぐりとぐらのおきゃくさま』(129号)、『ねずみじょうど』(132号)の13点が小さい判でしたので、今回の新規製版を機に大きくして、以降のものに揃えました。
縦判 257×182(B5正寸)→260×191(B5変型)
横判 182×257(B5正寸)→188×263(B5変型)
   (縦×横、単位は㎜、本文1頁分の寸法)
 これにより絵柄を拡大して迫力を増したり、場面によってはあえて絵柄の拡大はせずに、これまで画面から切れてしまっていた部分や、隠れていた部分を見せるなどの細かいレイアウトの調整ができました。

【見返し(みかえし)】 
 見返しというのは表紙・裏表紙の内側にくる面で、ハードカバーの本では表紙と本文を接合する役割をしています。今回新規製版をする作品の見返しは、これまでは印刷なしの白い見返しだけでした。今回からは扉(1頁目)の前と本文の最後の頁の後に1枚ずつ遊び紙の見返しを加え、それぞれの作品に合わせた色や絵柄を入れました。これにより視覚的にも、表紙から本文の物語へ、物語の終わりから裏表紙へという流れを自然に繋いでくれるようにしました。
 また、これまでは物語の場面数の関係で本文の最後の頁に絵柄と奥付(著者紹介や書誌情報など)が一緒に入り、窮屈なレイアウトになっているものがありました。第一期の15点のうちでは『とらっく とらっく とらっく』、『ふるやのもり』、『ごろはちだいみょうじん』がこれにあたりますが、今回から遊び見返しの裏に奥付を移動させることにより、奥付が絵柄のじゃまをしないようになりました。

Photo        Photo_1
『ごろはちだいみょうじん』旧版奥付頁          『ごろはちだいみょうじん』新版奥付頁

【用紙】
 月刊絵本「こどものとも」では、初期は上質紙と呼ばれる、表面にコートを施していない用紙を使用していて、途中から発色の良さや印刷の再現性などにおいて優れているコート紙(マット)に切替えました。製版は用紙の性質も考慮に入れて行うので、単純に紙だけ変えてしまうわけにはいきませんから、初期の作品である15点はハードカバーの「こどものとも傑作集」になっても上質紙を使用していました。今回は版を新しくするにあたりそれぞれの作品ごとに、製版方式(AMスクリーン、又はFMスクリーン。小俣技術担当部長の連載第2回目参照)とそれに適する用紙を検討して、ほとんどの作品がコート紙(マット)を選択しています。今回の新規製版によって色がとても鮮やかになったのは、もちろん最新の製版技術のおかげですが、用紙も一役かっているのです。
 また、単純に発色の鮮やかさを求めるのではなく、ナチュラルな白色度と素朴な風合いの上質紙が適していると判断した『おおきなかぶ』、『ふるやのもり』、『ねずみじょうど』などの作品には上質紙を使っています。

【製本】
 製本に関しては特にこれまでと比べて大きな変更はありませんが、ペーパーバックの月刊絵本「こどものとも」と、ハードカバーの「こどものとも傑作集」(「こどものとも絵本」)の製本の仕組みについてご紹介します。
 現在の月刊絵本「こどものとも」では「逆中綴じ(ぎゃくなかとじ)」と呼ばれる製本方式をしています。通常の「中綴じ」では背の側からホチキスを入れて表紙と本文を綴じるのですが、真ん中の見開きに折り返したホチキスの針の先端が露出していて手を傷つける危険性があります。それに対して、逆中綴じの場合は背の側からではなく「逆」の真ん中の見開きの側からホチキスを入れ、針の折り返し部は表紙で隠してしまうのでその心配はありません。
 「こどものとも傑作集」(こどものとも絵本)の場合は、本文の真ん中の見開きから糸でミシンをかけて本文と見返しを綴じています。それから表紙(ボール紙に表紙の用紙を貼ったもの)と、先ほどご紹介した見返しとの間に糊を入れて接合しています。
 『ふるやのもり』の真ん中の見開き(P14・15)ではバックの濃いグリーンとおおかみの絵柄に対して白いミシン糸を使用していたためセンターで目立ってしまっていましたが、今回の新規製版本からグリーンの糸を使い、バックとなじませることによって気にならないようにしました。

 この他にも扉の絵柄を新しく描き下ろしていただいたり、墨1色の印刷のところがカラーになったり、背にマークが入ったりと、これまでと変わったところがたくさんあります。ぜひ、実際にご覧になってその違いを確かめてみてください。

Photo_2     Photo_3
『ふるやのもり』旧版扉                『ふるやのもり』新版扉

 最後に感想ですが、原画のなかには『きつねとねずみ』、『三びきのこぶた』、『ぴかくんめをまわす』などの線版を別版にしているものや、『ばけくらべ』、『おばあさんのすぷーん』など版画的手法でフィルムに各色を描き分けるなどしたものがあります。その目的は精細な線描を活かすためであったり、版画的な力強さや面白さを出すためであったりです。どれも大変に手間のかかる表現手段ですが、著者の方が当時の製版を知った上で、印刷会社の方や編集者と力を合わせて最上の形で自分の表現を印刷物にしていった情熱を強く感じました。
 小さい頃に読んだり、入社以来毎日のように目にしている「こどものとも」の作品の原画に、旧版(その時の現行本)と、新規製版の校正刷を並べて、印刷会社の方に当時はそれをどう製版していったのかを質問し、時には著者の方にお会いして作品への想いを聞かせていただきながら、新しい版を創っていく作業に参加できたことは本当に貴重な経験でした。
 第一期の15作品は既に発売されていますが、残りの23作品(予定)は現在も進行中です。責任を感じつつも楽しんで今後の作業に取り組みたいと考えています。

                           福音館書店 制作課 勅使河原孝史

*原画の表現方法については『おじいさんがかぶをうえました―月刊絵本「こどものとも」50年の歩み』108~112頁をご覧ください。

4月 6, 2007 新規製版について | | コメント (0) | トラックバック (0)