「ホネホネさん」と私 にしむらあつこ
今から10年前に、私は絵本作家を目指すことに決めました。デビュー作『ゆうびんやさんのホネホネさん』が出版されたのは、8年前。「こどものとも」に、幼い時から慣れ親しんできた私は、初めての絵本はぜひ「こどものとも」がいいな〜と思い、出版社へ持ち込みをしました。服飾の学校を卒業し、特に絵の勉強はしていませんでしたが、出版社にラフスケッチをもっていっては直し、また見てもらうことを繰り返したこの時期が、絵本の学校のような感じでした。そんな中から、『ゆうびんやさんのホネホネさん』が誕生しました。
郵便屋さんを主人公にしたのは、私がもともと手紙を書くのが好きだったからかもしれません。新しい記念切手が出ると、ついつい気になって買ってしまいます。子ども時代、私は山と湖の町で育ったので、ホネホネさんの住む町も、自然が身近なのんびりした風景にしようと思いました。そして、ホネホネさんがいろんな人に郵便を届けることが、その当時の私の心境(いろんな人とつながっていたいな~)と重なり、思い入れ深い作品となったように思います。
はじめは、ホネホネさんはガイコツだし、皆さんに受け入れてもらえるだろうかと心配でもありました。ところが、出版されてからしばらくして、読者の方からたくさんお便りをいただいたのです。私の伝えたかったことが、そのまま伝わったのだな~と、自信になり嬉しかったです。その時のうれしさは、今でも私の絵本づくりのエネルギーになっています。
「ホネホネさん」は、その後、編集の方から「次のお話を考えてみない?」と誘ってもらいながら、この夏で5冊目になります。8年の月日の中で、青年だったホネホネさんも結婚し、子どもが生まれてお父さんになりました。私自身もホネホネさんを追いかけて、結婚し、昨年子どもが生まれました。(きっと私は心のどこかでホネホネさんを頼りにしているのでしょう~<笑>)人生の道先案内人です。
今は1歳になる息子と日々過ごしながら、制作しています。日中に仕事をしようとすると、私のもっている紙やペンを取りあげて邪魔をするので仕事は無理です。夜寝たのを見計らって、机にむかいます。今度出る『ホネホネさんのなつまつり』(「こどものとも」2006年7月号)も、そんな中で描きました。手紙を書いたり、小包を届けたりすることで、人と人がつながったり、潤ったりする身近な喜びを、これからもホネホネさんといっしょに伝えていけたら嬉しいです。
元気が出るような絵本をつくりたい! でも、絵本づくりはとても奥深いのです。ダラダラと時には遊んだり、学んだりしながら、エネルギーをためて絵を描いていこうと思っています!
にしむら あつこ(西村温子)
1972年、東京に生まれる。文化服装学院で洋裁を学ぶ。卒業後、絵本の制作を始める。自作の絵本に、『ゆうびんやさんのホネホネさん』『ゆきのひのホネホネさん』(ともに「こどものとも傑作集」で発売中)、『はるかぜのホネホネさん』『あきいろのホネホネさん』(ともに「こどものとも年中向き」、以上、福音館書店)、『野をこえて』(ビリケン出版)、さし絵に『オーパーさんのおいしいりんご』(金の星社)、『コブタくんとコヤギさんのおはなし』(福音館書店)、『おともださにナリマ小』(フレーベル館)などがある。「おおきなポケット」(福音館書店)に、マンガ『ハスの池小学校』を連載中。
5月 12, 2006 エッセイ1998年 | Permalink
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