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2006/03/03

『まあちゃんのながいかみ』をかいた頃のこと たかどのほうこ

 幼年童話を何篇か『母の友』に載せてもらっていた頃、「こどものとも」の方から、ストーリーを依頼されました。絵本なんて初めてです。これまでとは違ったお話作りをしなくちゃならないのかもしれない。そう考えて、それまでぼんやり見ていた「こどものとも」をちょっと神妙に開いてみると、まあ何とこの本の横に長いこと! 私は単純にも、横にびゅーんと伸びてるか、ずらずら並んでるもの、または上から下にざあーっと垂れてるか、下から上に伸びてくものといった、とにかく長めの画面を想像し、それに即したお話を作るよりないんじゃないか、と思ってしまったわけでした。
 むろんこれはバカバカしい妄想で、そんなお話しか成立しないのであれば、「こどものとも」のすべては、ヘビだのろくろっ首だのの話で埋め尽くされてしまったことでしょう。
 けれど、この被害妄想の途中で、まあ自然な連想ではあるけれど、『ラプンツエル』のことを思い出したのです。(正確に言えば『ズールビジアの物語』*を真っ先に思い出したんですけど)長い長いお下げにつかまって王子様が塔を登っていく挿絵(思えば太田大八さんの絵でした)にぞくぞくしながら見入ったこと、そしてついでに、その頃夢に描いていた自分の姿のことなどを、続々と思い出したのです。長い三つ編みをなびかせて、さりげなく友達を誘いに行くシーンなどを……。そう、伸ばしたかったんだよなあ……。
 ——と、思いを転がしているうちに、『まあちゃんのながいかみ』の構想は、ほとんどできあがっていたのでした。どんなとっかかりからお話を考え始めても、結局自分の中にあるものに行き着いてしまうということなのでしょうね。良くも悪くも。

 さて、原稿を届ける段になって、ふと心配になりました。文章というにはあまりに短いこの字だけを見せられても、見た人はきっとチンプンカンプンに違いない。ここはもうお節介だろうが、「こういうことなの」と下手な絵で示すしかない。というわけで、豆絵本を作って行きました。「想像場面の華麗さを強調したいので現実場面は、ほらこうやってモノクロにするんです」なあんて言いながら。——そしてこれが、絵にまで手を染めるきっかけになってしまったのでした。(編集者の想像力を正しく見積もっていたなら、事態は変わっていたことでしょう。むむう)
 さて、絵を描き始めたとき、近くに小さな姪がいたのは幸運でした。スケッチしようと椅子にすわってもらうと、椅子の脚の横木にするっと爪先を絡ませてすましています。さすが子どもだとおかしくなりました。横木がなければまっすぐ下におろすしかないところが、あったおかげで子どもならではの表情が出たのです。大道具小道具が表現の手がかりになるんだと気づいたりしました。

 稚拙な絵だけれど殊勝な気持ちで丁寧に作ったこの本。今もまだたくさんの子が喜んでくれるらしいのです。うれしいことです。

*「ラング世界童話全集(6)」『ちゃいろの童話集』(川端康成・野上彰訳 太田大八絵 東京創元社1958年)所収

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『まあちゃんのながいかみ』より
                                                                                                                                                
たかどのほうこ(高楼方子)
1955年函館市生まれ。東京女子大学文理学部日本文学科卒業。絵本、童話、児童文学など、様々な子どもの本を書いている。幼い子どもに向けた主な作品に『まあちゃんのながいかみ』『まあちゃんのまほう』『みどりいろのたね』(以上、福音館書店)、『つんつくせんせいどうぶつえんにいく』(フレーベル館)、『へんてこもりにいこうよ』(偕成社)、『ターちゃんとルルちゃんのはなし』(アリス館)、『のはらクラブのこどもたち』(理論社)などがあり、短編の物語集に『ねこが見た話』(福音館書店)、長編の物語に『時計坂の家』『十一月の扉』(以上、リブリオ出版)などがある。札幌市在住。

3月 3, 2006 エッセイ1989年 |

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