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2005/11/24

新しい物語絵本の展開(1)       時田史郎

 1972年度の回のこの欄の「『こどものとも』200号を越えて」のなかで、私の前任「こどものとも」編集長の征矢清さんは、「こどものとも」の場面数が、13場面から15場面に増えたことについて、「15場面なら15場面なりの構成がなくては絶対に緊張感を持った作品は生まれてこない」と指摘していますが、私も全く同感です。物語絵本では場面数が増えるにしたがって、よりしっかりと構成された物語が求められると思います。
 征矢さんの後任として、「こどものとも」編集長に任命された私が真っ先に考えたことも、実はこのことでした。「こどものとも」各号を企画するにあたって、まず、しっかりとした物語、テキストを手に入れなければならないということでした。
 幸いにして多くの作家の方がこの考えに共鳴してくださり、しっかりとした物語をかいてくださいました。そして画家の方もその物語にふさわしい表現となるように工夫に工夫を重ねてくださいました。
そのうちのいくつかを、ご紹介しましょう。

 まず思い出されるのは、『はじめてのおつかい』です。
 このテキストの母胎は、編集部に寄せられていた投稿作品でした。これを一読したかぎりでは、多くの投稿作品がそうであるように、作者の主人公に対する思い入れ(感情移入)が強く、悪くいえば押し付けがましく、絵本のテキストとしては不向きのように思えました。しかし、その感情移入の部分を飛ばしながら、繰返し読んでみると、過剰気味な感情表現の裏側からしっかりとした物語が浮かび上がってくるのです。しかもその物語は、ふつうのおとなたちにとっては、ありふれた子どもの日常生活のひとこまとしか見えない「はじめてのおつかい」が、子どもたちにとっては大冒険であることを見事に語っているのです。この物語は子どもたちの共感をよぶと確信できました。そこで、すぐに作者の筒井頼子さんに連絡をとり、お会いしました。そして、私たちの考えを率直に説明し、主人公に対する思いは画家の表現にゆだね、簡潔なテキストに書き直していただけないかとお願いしました。筒井さんは私たちの考え方をすぐに理解してくださり、何度も推敲して、現在刊行されているテキストにまで磨き上げてくださいました。
 絵を描いてくださった林明子さんには、すでに「かがくのとも」で2冊(『かみひこうき』1973年11月号、『しゃぼんだま』1975年4月号)の絵を担当していただいていました。その2冊の作品を通じて、子どもたちをいきいきと描く林さんの表現力については信頼していました。林さんは、この2冊の絵本を制作するにあたって、子どもたちの姿や表情をご自分の想像で描くのではなく、子どもたちが紙飛行機を作ったり飛ばしたりしている現場や、シャボン玉で遊んでいる現場に何度もでかけていってスケッチを重ね、それをベースにしながら、テキストが語る世界をより豊かにふくらませてくださいました。ですから、林さんが絵を担当してくださった2冊の「かがくのとも」は、子どもたちの真剣な表情や心から楽しんでいるときの健康なかわいらしさであふれています。
 物語絵本をお願いするのは初めてでしたが、絵本にかける林さんの思いやその制作姿勢に敬服していた私たちは、このテキストにもっとも相応しい画家として白羽の矢をたてました。幸いにして、林さんもこのテキストを気に入ってくださり、随所にユーモラスな表現を加えながら、徐々に高まっていく主人公の不安感や緊張感を、楽しく親しみやすい表現で過不足なく描いてくださいました。
 作者の筒井頼子さんとっても、画家の林明子さんにとっても、『はじめてのおつかい』は、はじめての物語絵本の制作でしたが、お二人の奇をてらわない制作態度によって、子どもの心にひびく、子どもたちの大冒険を描いた傑作が誕生しました。
 この絵本が出版されたとき、今は亡き児童文学者の瀬田貞二先生や画家の堀内誠一さんが激賞してくださったことを、昨日のことのように思いだします。そして、刊行以来、父母や先生方、何より子どもたちに愛され続けていることが、この絵本のすばらしさを物語ってくれていると思います。
(次回に続く)

時田史郎(ときた しろう)
1943年、東京に生まれた。早稲田大学卒業後、福音館書店に勤務。1975年より1983年まで「こどものとも」編集長を務める。民俗学に造詣が深く、特に、昔話と、昔話の採集・再話者であった佐々木喜善の研究をしている。絵本の再話に『うらしまたろう』(福音館書店)がある。神奈川県在住。

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1976(昭和51)年度にあったこと

植村直己、グリーンランド−カナダ−アラスカの北極圏1万2000kmを16ヵ月間かけて犬ぞりによる踏破に成功。(5月)
英仏が共同開発した超音速旅客機コンコルド就航。(米欧間を4時間弱で結ぶ)(5月)
日本武道館でモハメド・アリ対アントニオ猪木の格闘技世界一決定戦が行われる。(本格的格闘シーンのないまま引き分け)(6月)
第21回オリンピック・モントリオール大会(カナダ)開催。日本は、5連覇の体操男子団体、王座を奪回した女子バレーボールなどが金メダルを獲得。また女子体操で10点満点を連発したルーマニアのコマネチが話題をさらった。(7月)
東京地検、ロッキード事件で田中角栄を逮捕。(7月)受託収賄罪・外為法違反で起訴。(8月)

ソ連空軍のミグ25戦闘機が函館空港に強行着陸。パイロットがアメリカに亡命。(9月)
川崎市議会、わが国初の環境アセスメント条例案を可決(9月)
天皇在位50年式典が日本武道館で開催される。東京・神奈川・埼玉の革新系3知事欠席。(11月)
第34回衆議院議員選挙。ロッキード選挙とよばれ、自民党過半数割れ。三木首相退陣。(12月)
青酸コーラ殺人事件:東京都港区の公衆電話ボックスに置いてあったコーラを飲んだ高校生など2名が死亡。事件は迷宮入りに。(1月)
森英恵、日本人で初めてパリにオートクチュール「ハナエ・モリ・パリ」を開店(1月)
フィギアスケート世界選手権で佐野稔が日本人初の銅メダル獲得。(3月)


主なベストセラー:『翔ぶが如く』司馬遼太郎(文藝春秋)、『限りなく透明に近いブルー』村上龍(講談社)、『不毛地帯』山崎豊子(新潮社)
テレビ:『プロ野球ニュース』(フジテレビ)、『キャンディ・キャンディ』(NET・現テレビ朝日)、『欽ちゃんのどこまでやるの』(NET・現テレビ朝日)など放送開始。
新商品:業務用カラオケ機(クラリオン)、マイコン内蔵一眼レフカメラ(キャノン)、家庭用VHSビデオデッキ(日本ビクター)、ふとん乾燥機(三菱電機)
ヒット曲:『およげ!たいやきくん』子門真人、『ビューティフル・サンデー』ダニエル・ブーン、『北の宿から』都はるみ
この年に登場したもの:「ほっかほか亭」1号店(埼玉県草加市)、禁煙車(国鉄・東海道新幹線)

福音館書店では:ノンフィクション・シリーズ「福音館日曜日文庫」刊行開始。(『TN君の伝記』『少年動物誌』『自然の教室』)(5月)

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福音館書店から(第21回)

 「こどものとも」創刊50周年を記念して、これから各地で原画展を開催します。その第1弾として、新潟県立万代島美術館で「みんなのともだち『こどものとも』の絵本展」が次のとおり、12月23日から始まります。『ぐりとぐら』や「ばばばあちゃんのおはなし」をはじめ、各時代を代表する絵本や人気シリーズの原画約270点により、「こどものとも」の歩みと絵本原画の魅力をご紹介します。お近くの方、またこの冬、新潟にお出での方、これから旅行をご計画の方は、ぜひご覧ください。

みんなのともだち「こどものとも」の絵本展
新潟県立万代島美術館(新潟県新潟市)
2005年12月23日(金)~2006年2月12日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(観覧券の販売は午後5時30分まで)
休館日:月曜日(ただし1月9日は開館し翌10日休館。12月26日、1月16日、2月6日は特別開館日)、年末年始(12月29日~1月3日)
観覧料、関連イベント等、詳細については、こちらの新潟県万代島美術館のホームページよりご覧ください。

 このあと、原画展は、4月上旬から愛知県高浜市のかわら美術館で、7月中旬から兵庫県姫路市の姫路市立美術館で、10月上旬から広島県広島市のひろしま美術館で開催の予定です。近くなりましたら、またくわしくご案内しますので、お楽しみに。

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こすずめのぼうけん

1976年4月号
030241

ルース・エインワース 作 石井桃子 訳  堀内誠一 画

子スズメはお母さんから飛び方を教わりました。羽根をぱたぱたやっているとちゃんと空中にういているので、子スズメはおもしろくなってどんどん遠くまで飛んでいきました。そのうちに羽根が痛くなったので休もうと思いましたが、ようやく見つけた巣にはカラスやヤマバトやフクロウがいて、中に入れてもらえません。やがてあたりは暗くなって……。骨格のしっかりした物語絵本です。

「こどものとも」241号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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どうぶつたちのおかいもの

1976年5月号
030242

渡辺茂男 さく 太田大八 え

動物たちが町へ買い物に行きました。チータは蝶ネクタイ、シマウマは羽の付いた帽子、ワニは柔らかいブラシとくし、カバは小さなよだれかけ、クマは大きなケーキ……。買い物を終えたみんなは、バスで動物園のカモシカの家へいきました。明日から外国の動物園で暮らすカモシカ夫婦と赤ちゃんへの、プレゼントを買ってきたのです。一軒ごとの店の佇まいと動物の表情が楽しい絵本です。

「こどものとも」242号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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たぬきのくるむら

1976年6月号
030243

岸田衿子 さく 中谷千代子 え

みねちゃんは村の杏の木に、タヌキがいるのを見つけました。やがてタヌキはみねちゃんに馴れ、置いておいたおむすびを食べるようにまでなりました。翌年、村の近くを通っていた鉄道が廃止になったので、村の人はみんな町へひっこすことになりました。夏休み、杏の実をとりに村に帰ると、杏の木にはタヌキの子がたくさんいて……。山村での動物との交流が美しい色彩で描かれます。

「こどものとも」243号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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くった のんだ わらった

1976年7月号
030244

ポーランド民話 内田莉莎子 再話 佐々木マキ 画

ヒバリの夫婦は、モグラが巣のそばを掘りかえすので、オオカミに追い払ってくれるように頼みました。オオカミが「たらふく食わせてくれたら」というので、ヒバリは村で結婚のお祝いに集まっていた人々をおびきだして、オオカミにごちそうをはらいっぱい食べさせました。ところがオオカミはこんどは「ビールを思いっきり飲ませてくれたら」というのです……。ポーランドの愉快な昔話です。

「こどものとも」244号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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ぐりとぐらのかいすいよく

1976年8月号
030245

なかがわりえこ と やまわきゆりこ

浜辺で遊んでいた野ネズミのぐりとぐらが、沖から流れてきた瓶を拾って、栓を開けてみると、中にはうみぼうずからの手紙が入っていました。手紙を見たぐりとぐらは、浮き袋をつけてうみぼうずの島までたどりつき、穴に落ちた灯台の真珠をみつけてあげました。うみぼうずはお礼に、いろいろな泳ぎ方を教えてくれます。「ぐりとぐら」の絵本の3冊目です。

「こどものとも」245号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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みっつのなぞ

1976年9月号
030246

山形の民話 武田 正 再話 平山英三 画

長者は自分の出す3つの謎を解いた男を一人娘の婿にしようと考えました。村祭りの夜、娘は山からきた一人の若者と恋に落ち、うちに連れていきました。長者はまず、蔵の中いっぱいにある鍬の数を、たばこ3服する間に答えろといいます。若者は途方にくれるますが、娘の歌が聞こえてきて……。長者の出す難題を、娘の歌の助けを借りて、知恵と勇気で解決し、幸せをつかむ昔話です。

「こどものとも」246号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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こえどまつり

1976年10月号
030247

大道あや 作

ネコのごんごんはイヌのちのび、カラスのあーよを連れ、小江戸祭りを見に出かけました。町には屋台が立ちならび、人々でにぎわっています。神主さんのあとからは御輿と、稚児さんが曳く山車が続きます。笛と太鼓の音がひっきりなしに鳴りわたります。あーよは稚児さんの花笠をくわえて飛んでいってしまいました……。古い町の華やかな祭りを色彩豊かに描いた、大道あやの第2作です。

「こどものとも」247号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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あな

1976年11月号
030248

谷川俊太郎 作 和田 誠 画

日曜日の朝、何もすることがなかったので、ひろしは穴を掘りはじめた。妹が「あたしにも掘らせて」といっても「だめ」。友だちが「何にするんだい」と聞いたら、「さあね」。穴は次第に深くなり、穴の底からいもむしがはいだしてきた。穴の底に座りこんで「これは僕の穴だ」とひろしは思う……。横長の本を縦に開く斬新なデザイン。谷川俊太郎、和田誠とも「こどものとも」初登場です。

「こどものとも」248号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1983年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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こうさぎのクリスマス

1976年12月号
030249

松野正子 さく 荻 太郎 え

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。

「こどものとも」249号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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こしおれすずめ

1977年1月号
030250

瀬田貞二 再話 瀬川康男 画

昔、あるおばあさんが、子どもの投げた石にあたって腰の折れたスズメを助け、介抱してやりました。元気になって飛びたっていったスズメはヒョウタンの種を一粒もってきました。その種をまくと、大きなヒョウタンがたくさんなり、中にはお米がぎっしりつまっていました。それを聞いた隣のおばあさんも腰折れスズメを探しますが……。宇治拾遺物語の説話をもとにしたお話です。

「こどものとも」250号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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きこりとおおかみ

1977年2月号
030251

フランス民話 山口智子 再話 堀内誠一 画

ある冬、オオカミは食べ物をさがしてきこりの家に忍びこんだものの、熱いスープをかけられて、頭を大やけどして逃げていきました。1年後、きこりが森で木を切っていると頭のはげたオオカミが群れをつれてやってきました。きこりは木に登って逃げますが、オオカミは1ぴきずつ肩の上に乗って、迫ってきます。そこで、きこりは……。フランスの昔話を堀内誠一がダイナミックに描きます。

「こどものとも」251号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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くわずにょうぼう

1977年3月号
030252

日本の昔話 稲田和子 再話 赤羽末吉 画

欲張り男のところに、よく働くが飯を食わない美しい女がやってきて女房になりました。最初は喜んだ男でしたが、ある日、蔵の米がごっそり減っているので、隠れて見ていると、女房は男の留守に米を炊き握り飯を作ると、髪をほどいて頭のてっぺんの大きな口から食べてしまいました。女の正体が鬼婆だったことを知た男は、鬼婆にとらえられ……。赤羽末吉の絵によるスリリングな昔話の絵本。

「こどものとも」252号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1980年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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1976年

1976年度は「年中向き」の新作はありません。

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2005/11/18

<作家インタビュー>『ごろごろにゃーん』が生まれた日   長新太

 猫は、ふだんから鳥とか見ていて、「空を飛んでみたいなあ」と思ってるんですよ。同志を集めて。飛行機も、彼らのイメージだから魚っぽいんですね。手が出てくるページがあるでしょ。「どういう意味だかわからない」って、よく抗議を受けるんですが、いってみれば心象風景なんです。猫は、その辺にいても、いつも恐怖にさらされているわけでしょ、人間の。だから、空を自由に飛んでいろんなものを見てみたい、という気持ちは、ふだん猫が考えていることなんですよ。(笑)
 
 猫の声と飛行機の音をかけて「ごろごろ」なんです。医者に行って、「おなかが痛い」っていうと、「どういうふうに痛いか」と聞かれるんですが、それを具体的にいうのは難しい。僕が行ってる医者は、わざと人を試そうと聞くときがあるんですね。「どう痛いのか、うまく表現してください」って。こっちも「しくしくしてて、そこにちょっとちくちくが入って、しくちく」「ちくちくまではいかないから、ちーくちーく、ぐらいかな」とか答えて。
 言葉はおもしろくて難しい。猫が歩いてくるのと、犬が歩いてくるのでもちがうはず。それを音にあらわすとき、いろいろ考えなきゃ。絵本の文章は、いつも神経を使います。『ごろごろにゃーん』は、どのページも文章が一緒だから、「手抜きだ」「いい加減だ」って怒られちゃうんだけど。(笑)

 大人はどうしても、理屈の通ったものでないと信用しない、という面が強いですね。もちろん、「ためになる絵本」もあっていいんだけど、「意味はないけれどもすごくおもしろい、ユーモアがあって子どもが本当に喜んで笑っちゃう」、そういう本も重要だと思うんです。どうしても笑いとかユーモアが軽んじられ、生真面目なものが最高、という考えがある。そうなると、大人のところでストップされてしまって、子どもの手もとに届かないんですよ、僕の絵本。
 僕は40年くらい、この仕事をしているんだけど、ずっとそういうことで悩んできたような気がします。あんまり悩んでも健康によくないけど。(笑)

 日本にも昔から「笑い」の文化があったし、僕の子どもの頃、昭和ひとけたの話だけど、「少年倶楽部」で「冒険ダン吉」や「のらくろ」が圧倒的な人気を博している一方で、「長靴三銃士」なんていう漫画があって、頭に長靴くっつけてるのが三人出てきて、絵にしてもお話にしても、前衛的でおもしろかった。僕にとってはそういうのが印象的で、今でも覚えている。どこかにそういうのが残ってて、原動力みたいになって、ずうーっと動いている、という感じがありますね。

 小さな子どもの視点はすごい。僕はそういう人たちを相手に本を描いている。僭越な気がします。言ってみれば、先生に対して自分の絵を見せているような。だから、子どものすごいところ、エッセンスを、全部自分の中に集めちゃって、そこからまた、ぐわっと出して創作しよう、という気持ちがあります。ヘンリー・ミラーの画集で『描きたいように描いて、幸せに死ね』というタイトルのがあるんですが、「ああ、それが一番いいんじゃないかなあ」って。人が何といおうと、自分で好きなものを描いて、それに子どもが共感を持ってくれたら、一番幸せ。

(「こどものとも年中向き」2000年7月号折込付録より一部を省略して再構成しました)

長 新太(ちょう しんた)
1927年、東京に生まれる。東京都立蒲田工業高校卒業。1948年東京日日新聞の連載漫画に採用され、それを機会に1955年まで東京日日新聞の嘱託となる。以後は独立して、絵本、イラストの仕事で大活躍。『新聞ができるまで』(「小学生文庫」小峰書店 1955)が最初の挿絵の仕事で、『がんばれさるのさらんくん』(「こどものとも」24号 福音館書店 1958)が絵本のデビュー作。1959年『おしゃべりなたまごやき』(「こどものとも」35号 福音館書店)で第5回文藝春秋漫画賞、1981年『キャベツくん』(文研出版)で第4回絵本にっぽん賞、1984年『ぞうのたまごのたまごやき』(福音館書店)で第33回小学館絵画賞、など受賞。他にも多数の著作がある。
(福音館書店で現在販売中の作品はこちらからご覧下さい)

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1975(昭和50)年度にあったこと

イギリスのエリザベス女王ご夫妻、来日。(5月)
エベレスト日本女子登山隊の田部井淳子、女性として世界初の登頂に成功。(5月)
国連、初の国際婦人年世界会議を開催。(メキシコ市・138ヵ国参加)(6月)
ウィンブルドン大会(全英オープン・テニス大会)で沢松和子・アン清村組が、女子ダブルスで優勝。(7月)
六価クロム公害事件:日本化学工業工場跡地の六価クロム汚染が告発され、従業員が職業病にかかり、肺ガンで死亡していたことも判明した。これらをきっかけに、クロム鉱滓が全国各地に未処理のまま埋め立てられていることが発覚して、六価クロム公害が大きな社会問題となった。(7月)
沖縄国際海洋博覧会が開幕。(36ヵ国参加)(7月)
パルプとレーヨンのメーカーである興人が倒産。負債総額は2000億円で戦後最大の倒産となった。(8月)

天皇・皇后両陛下、初の米国訪問に出発。(9月)
第1回主要先進国首脳会議(サミット)、フランスのランブイエ城で開催。(11月)
公労協、三公社五現業全てが参加する史上最大規模の「スト権奪還スト」に突入。(国鉄全線8日間ストップ)(11月)
北海道・幌内炭鉱ガス爆発事故。作業員ら24人が死亡、7人が重軽傷。(11月)
鹿児島で日本初の五つ子が誕生。(1月)
ロッキード事件発覚:米上院外交委員会で、ロッキード社が旅客機トライスターや対潜哨戒機を売り込むために1,000万ドルの工作資金を使って日本など各国の政府高官に働きかけてきた事実が発覚。衆議院予算委員会でも、全日空社長や丸紅会長などの証人喚問が行われ、その後田中前首相の逮捕(7月)にまで発展した。(2月)


主なベストセラー:『播麿灘物語』司馬遼太郎(新潮社)、『複合汚染』有吉佐和子(新潮社)
テレビ:『欽ちゃんのドンとやってみよう』(フジテレビ)、『Gメン75』(TBS)、『大草原の小さな家』(NHK)、『クイズダービー』(TBS)、『徹子の部屋』(NET・現テレビ朝日)など放送開始。
新商品:100円ライター「チルチルミチル」(東海精器)、家庭用VTR「ベータマックス」(ソニー)、「チップスター」(ヤマザキ・ナビスコ)、「ポテトチップス」(カルビー)
ヒット曲:『昭和枯れすゝき』さくらと一郎、『シクラメンのかほり』布施明、『思い出まくら』小坂恭子
この年に登場したもの:「指名打者(DH)制」(プロ野球パ・リーグ)、「禁煙タイム」(国鉄・都内5駅)、「X線コンピューター断層撮影(CTスキャン)」(東京女子医大)、「プッシュホンの公衆電話」(電電公社)

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福音館書店から(第20回)

 「こどものとも」600号は来年の3月号ですから、発売は2月初旬になります。そんなわけで、これまでもこのページで折にふれてお伝えしてきましたが、この12月から2月にかけて、記念出版の企画商品があいついで刊行されますので、お知らせします。(ホームページの「こどものとも50周年記念商品のご案内」のページも更新しましたので、あわせてご覧下さい。)

おじいさんが かぶを うえました−−月刊絵本「こどものとも」50年の歩み
定価2,625円(税込)12月2日販売開始予定
このブログでは画面上でご覧いただいている「こどものとも」「こどものとも年中向き」のバックナンバーのすべての表紙画像と簡単な書誌データを、図録としてまとめたものです。また昔話、動物の絵本などジャンルごと、作家ごとに絵本を構成して紹介するページでは、「こどものとも」の世界の広がりをご覧いただけます。作家インタビューもブログでは取りあげられなかった、たくさんの絵本の誕生の秘密が明かされています。このブログをお楽しみいただいている方には、ぜひお求めいただきたいと思います。

こどものともセレクション(15冊セット・分売可) 
セット定価 12,600円(税込)、分冊定価 各840円(税込)1月18日販売開始予定
「こどものとも」50年の歴史の中から、1970年代を中心に近年の話題作まで、物語絵本、民話、ナンセンス、写真、字のない絵本など、様々なジャンルの絵本15冊を厳選しました。思い出の絵本がハードカバーで再登場です。1冊ずつでもお求めいただけます。

またこのセレクションとは別に、長新太さんのデビュー作
がんばれさるのさらんくん定価780円(税込)1月18日販売開始予定
も復刊しますので、お楽しみに。

こんにちは おてがみです
定価1,680円(税込) 2月1日販売開始予定
「ぐりとぐら」「だるまちゃん」「やなぎむらのむしたち」など、子どもたちの大好きな絵本の主人公10人からの手紙が1通ずつ、ページについた封筒におさめられている絵本です。最後には絵本の主人公たちが大集合した特大ページも付いています。

こどものとも復刻版
こどものとも世界昔ばなしの旅も大好評発売中です。

これらの記念出版のご案内パンフレットもお送りしますので、どうぞこちらからお申し込み下さい。

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ねこのごんごん

1975年4月号
030229

大道あや さく・え

腹を空かして歩いていた小さな野良ネコは、おいしそうな匂いがしてきたので、ある家にあがりこみましたが、その家の年寄りネコ・ちょんに、ごんごんと名付けられ、その家に住みつくことになりました。ちょんから、「何ごとも自分で覚えるが肝心」といわれて、扉の開け方、木の下り方などを学びながら、ごんごんは成長していきます。60歳から絵を描きはじめた大道あやの初めての絵本です。

「こどものとも」229号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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おばあさんのいないまに

1975年5月号
030230

なかのひろたか さく・え

おばあさんに留守番をたのまれた白いネコが、ひとりで大きなホットケーキを焼いていると、匂いをかぎつけたカラスが煙突からたくさん入ってきました。一緒に大騒ぎして食べたあと、煙突を抜けて外にでると、白いネコは真っ黒の“カラスネコ”になっていました。でもカラスと一緒に「宙返りとび」をして遊んでいるうちに雨がふってきて……。ネコとカラスのやりとりが愉快な絵本です。

「こどものとも」230号
19×26 32ページ 当時の定価200円

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ぼくがとぶ

1975年6月号
030231

ささきまき さく・え

ぼくは、木をけずってたくさんの小さな部品を作り、組み立てて布を張り、塗料をぬりエンジンを積んで、本当に空を飛ぶ飛行機を作りました。失敗して墜落もしたけれど、作り直して空へ飛びたちます。野山や町や砂漠を越えて、昼も夜も飛びつづけ、オーロラの光る空の下でセイウチの群れに出会いました。物を作りあげる楽しみと空を飛ぶ夢を満喫させる、佐々木マキの絵本第2弾です。

「こどものとも」231号
26×19 32ページ 当時の定価200円

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おにより つよい おれまーい

1975年7月号
030232

サトワヌ島民話 土方久功 再話・画

おれまーいは生まれるとすぐはいはいができ、4日たつと歩きはじめ、1日1日と大きくなって、村一番の力持ちで乱暴者の子どもになりました。おれまーいを恐れた村人たちは、彼を殺してしまおうと手をつくし、ついには、恐ろしい鬼の住む島に置き去りにしました。ところがおれまーいは鬼を倒し、鬼の船をもらって再び村に帰ってきたのです。土方久功が自ら採集したサトワヌ島の昔話です。

「こどものとも」232号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は、こどものとも創刊50周年記念企画「こどものとも世界昔ばなしの旅」の1冊としてハードカバーで刊行されています。

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ねずみのハーリー

1975年8月号
030233

儀間比呂志 さく・え

ネコ王の誕生祝いで、この世で一番大切なものは何かと問われ、ネコのけらいたちは「ネコ王こそ国の宝」と答えますが、ネズミの頭は「水をくださる神様です」と答え、島流しにされてしまいました。ところがネコ王の島は日照りに苦しむこととなり、神のお告げでネズミの頭を連れもどすために、3艘のハーリー(竜舟)が島にむかいましたが……。海神祭の由来を昔話をもとに創作した物語です。

「こどものとも」233号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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ひつじかいとうさぎ

1975年9月号
030234

ラトビア民話 うちだりさこ 再話 すずきこうじ 画

羊飼いは、森でつかまえたウサギが囲いをぬけだし森に逃げたので、追いかけていきました。出会ったオオカミにウサギを捕まえてくれと頼みますが、オオカミは「自分でつかまえな」と知らんぷり。次に会ったこん棒にオオカミを殴ってくれと頼んでもだめ。火にこん棒を焼いてくれといってもだめ。川も、ウシも知らんぷり。でもクマは……。スズキコージの「こどものとも」デビュー作です。

「こどものとも」234号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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くいしんぼうのあおむしくん

1975年10月号
030235

愼 ひろし 作 前川欣三 画

空の色をした変な虫がまさおの帽子を食べていました。そのあおむしはくいしんぼうで、おやつでも紙くずでも、何でも食べてどんどん大きくなりました。町のゴミを全部食べてしまうと、とうとう町ごとパパやママもみんな食べてしまったのです。仕方なくふたりは旅にでましたが、あおむしは出会うものすべてを食べつくし、ついに地上には何もなくなって……。壮大なスケールのSF的な物語。

「こどものとも」235号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は2000年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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はないくさ

1975年11月号
030236

小林保治 ぶん 平山英三 え

昔、ある秋の日の京の都で、子どもたちが摘んできた花を比べあっていました。けれども、どれもオミナエシだったので、白菊を摘みにみんなで野原に行くことにしました。ところが、野原にあらわれたオミナエシの精は、子どもたちが白菊をほしがることに腹をたて、他の花の精たちも引きつれて、白菊を散らそうとします。そこにあらわれた白菊の翁は……。謡曲をもとにした物語です。

「こどものとも」236号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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つきよのばんのさよなら

1975年12月号
030237

中川正文 さく 太田大八 え

夜、父親が湖に魚を捕りにいっているあいだ、たろうは一人で留守番をしていました。戸をたたくものがいるので開けてみると、クマの親子が軽く頭を下げ去っていきました。たろうはそのクマが、去年の夏、庭で干していた梅干しを食べていたのを見逃してやったクマだったと思いだしました。あの時お腹にいた子どもが生まれたのだろうと……。静かな月夜の晩の心にしみるお話です。

「こどものとも」237号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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ごろごろ にゃーん

1976年1月号
030238

長 新太 作・画

ごろごろ鳴るお魚型の飛行機に、にゃーんにゃーんと鳴くネコたちがゴムボートから乗りこんで、ごろごろにゃーん、ごろごろにゃーんと、飛行機は飛んでいきます。魚を釣り、マッコウクジラのジャンプする海を飛びこえ、UFOに出会い、ビルの上を、鉄橋の下を、ネコを乗せた飛行機は、どこまでもどこまでも飛んでいきます。長新太の真骨頂を見せる、斬新で愉快な絵本です。

「こどものとも」238号
19×26 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1984年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
長新太さんのインタビューはこちらからご覧ください。

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だいふくもち

1976年2月号
030239

田島征三 作

怠け者のごさくは、ある晩、自分を呼ぶ声に家の中をさがしてみると、床下に300年も住みついているという大福餅を見つけました。その餅は小豆を食わせると次々と小さな大福餅を産みます。その餅を売りだすと、うまいうまいと評判になり、ごさくは大金持ちになりました。ところが、ごさくが欲張って山盛りの小豆を大福餅の上に積みあげて食わせたために……。

「こどものとも」239号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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はじめてのおつかい

1976年3月号
030240

筒井頼子 さく 林 明子 え

みいちゃんはお母さんに、初めておつかいを頼まれました。百円玉を二つしっかり握りしめて家を出ると、友だちに出会ったり、坂道でころんだりしながら、お店につきました。なかなか声をかけられませんでしたが、思い切って大きな声を出し、無事牛乳を買うことができました。はじめておつかいをする子どもの、緊張感や達成感などの心の動きを、さわやかに描いています。

「こどものとも」240号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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1975年

1975年度には「年中向き」の新作はありません。

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2005/11/11

「こどものとも」との出会い    はせがわせつこ

 毎月やってくる「こどものとも」にいつ出会ったのだろう。今や、無数の「こどものとも」は記憶の宇宙塵のなか、30光年の彼方の星々となってさまざまな色に明滅している。どれがいつのものやら……これは望遠鏡が必要だ、と担当の人に編年体のリストを送っていただいたら、見えた、見えた。私が自分と2歳の長男のために「こどものとも」をとり始めたのは1974年だ。『あらいぐまとねずみたち』、『クリーナおばさんとカミナリおばさん』、『しちめんちょうおばさんのこどもたち』、『ちいさなたいこ』、『くずのはやまのきつね』、『つつみがみっつ』、『おおきなひばのき』、『こうしとむくどり』と、懐かしい絵本の一等星が軒並み輝いているではないか。ここだ、と私は確信した。

 本箱の前に立って、背表紙の半壊した古そうなのをひっぱり出すと、あった、あった、4人のわが子が入れ代わりに読んでよれよれになった『あらいぐまとねずみたち』が。そっと開くと、たちまち子どもたちの幼い声が聞こえてきた。森の中のギョロ目のふくろうを指さして「ホー、ホー」と、言っていた2歳の息子の声。保育園の行き帰り、裸の柱が林立する建築中の家を見るたびに、一緒に歌ったあの歌。「とんかん とんかん とんかん かん/あかんぼたちにゃ よつゆは どくだ/やねが できたら よつゆに ぬれぬ」
 長女はこの絵本に出てくるねずみの新築の家の断面図が好きで、一人でじっと見入っていた。今でもその背中を思い出す。三つ子の魂何とやら、彼女はいまだにドール・ハウスの熱烈なファンである。

 1冊の「こどものとも」を開くと、時間の井戸の底から立ち上ってくる子どもたちの声。それは私にはどんなアルバムの写真よりも生ま生ましい。幼い子の息がふっと首にかかる気がして一瞬、背中が熱くなってしまう。たくさんの「こどものとも」に子どもたちの笑い声やため息や歌声がたたみこまれていく。絵本はそうやって成長するのだ。我が家の本棚の「こどものとも」たちはわが子だけでなく私の読み聞かせの会「おはなしくらぶ」に通ってきた、たくさんの子どもたちの声声を吸い取って豊かに育っている。「こどものとも」が来ると、まるで絵本の赤ちゃんが来たみたいだ、と思う。大きく育ってほしいと思う。そして、どうしても捨てられない「こどものとも」で我が家の本棚はいつも満員になってしまうのだ。

長谷川摂子(はせがわ せつこ)
絵本、童話作家。1944年、島根県平田市生まれ。東京外国語大学でフランス語を専攻。東京大学大学院哲学科を中退後、保育士として6年勤務。現在は「赤門こども文庫」「おはなしくらぶ」をひらいて、子どもたちと絵本や詩、わらべうたを楽しんでいる。絵本に『みず』『めっきらもっきら どおんどん』『きょだいな きょだいな』(いずれも福音館書店)、「てのひらむかしばなし」シリーズ(岩波書店)など。読み物に『人形の旅立ち』(福音館書店/第19回坪田譲治文学賞ほか受賞)、評論に『子どもたちと絵本』(福音館書店)がある。埼玉県在住。

11月 11, 2005 1974年, エッセイ | | コメント (0) | トラックバック (0)

1974(昭和49)年度にあったこと

春闘共闘委員会、初の国民春闘。81単産600万人統一ストを実施し、国鉄初の全面運休、日本列島は2日間マヒした。(4月)
日中航空協定調印。(4月)
「伊豆半島沖地震」(M 6.9、死者・不明30人、負傷者102人)(5月)
インド、初の地下核実験を行う。(6番目の核保有国に)(5月)
労働省、春闘結果を発表。1部上場企業261社の賃上げは単純平均で32.9%増、史上最高のベースアップ。(6月)
第10回参議院議員選挙。7議席差の保革伯仲に。(7月)
北の湖が第55代の横綱に、21歳2ヵ月は史上最年少。(7月)

原子力船「むつ」、漁民による抗議の海上封鎖の中、出力上昇試験のため大湊を出港。(8月)太平洋上で放射能漏れを起こし実験中止。(9月)帰港を地元漁民に拒否され漂流を続けていたが、原子炉を凍結することや母港撤収するなどの条件がおりあい、50日ぶりに母港に帰港。(10月)
雑誌「文藝春秋」11月号、田中角栄退陣のきっかけとなった立花隆「田中角栄研究」を掲載。(10月)
巨人の長嶋茂雄が引退、「巨人軍は永遠に不滅です」。(10月)
田中角栄首相退陣。三木武夫内閣成立。(12月)
春場所で大関貴ノ花が初優勝。兄若乃花と史上初の兄弟優勝。(3月)


主なベストセラー:『かもめのジョナサン』リチャード・バック(新潮社)、『ノストラダムスの大予言』五島勉(祥伝社)
テレビ:『ニュースセンター9時』(NHK)、『世界の料理ショー』(テレビ東京)、『赤い迷路』(TBS、山口百恵の“赤い”シリーズ第1弾)、『パンチDEデート』(フジテレビ)、『まんが日本昔ばなし』(NET・現テレビ朝日)、など放送開始。
新商品:「がん保険」(アメリカン・ファミリー日本)、「ハローキティー」商品(サンリオ)
ヒット曲:『なみだの操』殿さまキングス、『あなた』小坂明子、『うそ』中条きよし
この年に登場したもの:「Gマーク」(通産省・グッド・デザイン商品選定制度)、「朝日カルチャーセンター」(朝日新聞社)、コンビニ第1号店(セブンイレブン)、「アメダス」(気象庁)

11月 11, 2005 1974年, そのころあったこと | | コメント (0) | トラックバック (0)

福音館書店から(第19回)

 先週、1973年度より増ページや用紙の変更、新しい製版方式などによって、「こどものとも」が新しい時代に入ったことについてお知らせしましたが、一方でこの時期は、社会的には石油ショックによる物価の急激な上昇が継続している時期でもありました。
 この当時の状況を示す、1974年4月号の折込付録に掲載された「お知らせ」の一部をご覧下さい。

 子どもの本の出版という仕事は、読者である子どもが成長した暁にその成果が問われるものです。私どもはそうした長い展望にたって、内容と体裁に調和のとれた本づくりを心がけてまいりました。ところがご承知のように、日本の経済状況が激変し、とりわけ石油とパルプの不足は用紙の供給を極めて困難にし、また想像に余る価格の高騰をもたらしました。石油不足からくる製紙工場の操業短縮は、この先も印刷用紙の入手難をまねくと判断されます。この事態はもはや一出版社の企業努力では防ぎえませんが、その中でも私どもは最善の努力をして、本の内容の基本的な質は維持し、定価も極力現状を維持したいと考えております。

 このあとの文章は、用紙がやや薄くなること、「普及版こどものとも」の定価を30円値上げすることのおことわりになっています。当時の経済・社会状況は現在とずいぶんちがいますが、出版という仕事は経済の大きな流れの中で翻弄されながらも、必死で生きぬいていかなければならないことを、この当時の時代を見直していると、今さらながら自覚させられます。

 来週からも、新しい時代に入った「こどものとも」を紹介していきます。ご期待下さい。

11月 11, 2005 福音館からのお知らせ | | コメント (0) | トラックバック (0)

あらいぐまとねずみたち

1974年4月号
030217

大友康夫 さく・え

森の川辺に住むアライグマの親子の家から、ある日ジャガイモや豆が袋ごとなくなっていました。こぼれた豆のあとを追っていくと、ネズミたちが前になくなったおもちゃで遊んでおり、豆の袋もそこにありました。アライグマの親子は怒って、ネズミたちをつかまえますが、ネズミたちが食べ物に困っていると知り、一緒に畑を作り、家を建てることにしました。大友康夫の初めての絵本です。

「こどものとも」217号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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クリーナおばさんとカミナリおばさん

1974年5月号
030218

西内みなみ さく 堀内誠一 え

古くなった掃除機のクリーナおばさんは、ごみの島に捨てられました。まわりには洗濯機のワッシャや冷蔵庫のブリザードおじさんなど電気製品たちがたくさんいて、まだ働けるのにと、口々に文句をいっていました。そのとき、空が光って雷が落ちたかと思うと、電気製品たちはみんな動けるようになって大喜び、お祭り騒ぎをはじめましたが……。電気製品を主人公にした愉快な物語です。 

「こどものとも」218号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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わんぱくこぞうとおんなのこ

1974年6月号
030219

石松知磨子 さく・え

森の虫と仲良しの女の子は、いつも5人のわんぱくこぞうにいじめられていました。ある日とうとうたまらなくなって女の子が逃げだすと、野原の虫たちはみんな女の子のまわりに集まってきました。虫たちは女の子を励まし、いっしょに仕返しすることにしました。こんどは虫たちに追いかけられたわんぱくこぞうたちが、すりばち池の中へ滑り落ち……。けんかして仲良くなる元気な子どもたちのお話です。

「こどものとも」219号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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しちめんちょうおばさんのこどもたち

1974年7月号
030220

吉野公章 さく おのきがく え

シチメンチョウのおばさんは、沼のほとりで産みっぱなしにされた4つの卵を見つけ、温めて孵しました。生まれた子どもたちは全然似ていませんでしたが、おばさんは自分の子として育てました。やがて子どもたちは、泳いだり空を飛ぶことができるようになり、マガモの群れがやってくると、誘われて、いっしょに暖かいの国へ旅立つことになりました。力強いタッチで鳥の世界を描きます。

こどものとも」220号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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ちいさなたいこ

1974年8月号
030221

松岡享子 さく 秋野不矩 え

心の優しい百姓のおじいさんとおばあさんは、丹精こめて立派なかぼちゃを育てました。ある晩、どこからか楽しそうな祭り囃子が聞こえてきたので不思議に思った二人が音のする方へいくと、お囃子はその見事なかぼちゃの中から聞こえてくるのでした。翌日そのカボチャをもいで、夜になって中をのぞくと、なんと小さな人たちが踊っていました……。小さな小さな別世界の物語。

「こどものとも」221号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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ゆっくりくまさん

1974年9月号
030222

森 比左志 さく 西巻茅子 え

ゆっくりくまさんは食べ物を探しにやってきましたが、ドングリはリスに、栗の実はサルに、赤い木の実はウサギに、みんな先に食べられてしまいます。でも、川向こうにヤマブドウがあるのを見つけたゆっくりくまさんは、川に大きな石を一つずつ運んでいきました。できあがった飛び石づたいゆっくりくまさんもみんなもおなかいっぱいヤマブドウを食べました。のびのびした絵の絵本です。

「こどものとも」222号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

この絵本は、こどものとも創刊50周年記念出版「こどものともセレクション」の1冊として刊行されています。

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くずのはやまのきつね

1974年10月号
030223

大友康夫・西村繁男 さく 西村繁男 え

昔、くずのは山の麓の村で米の不作が続き、村人たちは粟や木の根しか食べられない日が続いていました。たみぞうとごさくの兄弟は、じいさまからキツネが嫁入りする年は豊作になるという言い伝えを聞いて、キツネを探しに雪の山に入っていきました。そこでキツネが翌年の嫁入りの相談をしているのを聞き、父親に告げますが……。労働の喜びをていねいに描いた、西村繁男の絵本デビュー作。

「こどものとも」223号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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しごとをとりかえたおやじさん

1974年11月号
030224

ノルウェーの昔話 山越一夫 再話 山崎英介 画

昔、おこりっぽくていつもおかみさんに文句を言っているおやじさんがいました。ある日、おかみさんはそんなにおこるなら仕事を取りかえようと申し出ました。おやじさんも大賛成で、翌日はおかみさんが牧草刈りにいき、おやじさんは赤ちゃんのめんどうをみながらバター作りや、牛の世話にとりくみますが、次々に大変なことが……。ドタバタぶりが何ともおかしい昔話です。

「こどものとも」224号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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トケビにかったバウィ

1974年12月号
030225

朝鮮民話 きむやんき 再話 呉炳学 画

みなしごのバウィは、とてもりこうで、すもうが大好きな少年でした。バウィは端午の節句の相撲大会で大人をたおして優勝し、子牛を賞品にもらいました。帰る途中、恐ろしい妖怪トケビに勝負を挑まれます。バウィが見あげると、トケビはどんどん大きくなります。でもトケビの秘密を探りあてた、バウィは……。知恵と勇気で魔物をたおし、お金まで手に入れてしまう痛快な昔話です。

「こどものとも」225号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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つつみがみっつ

1975年1月号
030226

土屋耕一 さく たざわしげる え

「るすにする」「かるいきびんなこねこなんびきいるか」「このこどこのこ」「このみくんさんねんさんくみのこ」「ようかんかうよ」「ぞうかもかうぞ」……。前から読んでも後ろから読んでも同じ文(回文)のオンパレード。言葉あそびの楽しさを、軽やかな絵とともに満喫する絵本です。

「こどものとも」226号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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おおきなひばのき

1975年2月号
030227

鈴木喜代春 さく 山口晴温 え

青森県の山の中に住むのぼるは、おじいさんにつれられてゼンマイ採りにいき、ヒバの林に入っていきました。のぼると同じくらいの高さの木でも15歳、かかえきれない太い木は500歳にもなると聞いてびっくりします。やがて雪の降り積もる冬、ヒバは雪の中で花を咲かせるのです。1年間の季節の移ろいの中で、ヒバの木のたくましい成長の姿を描きます。

「こどものとも」227号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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こうしとむくどり

1975年3月号
030228

岩崎京子 さく 小松崎邦雄 え

町はずれの小さな牧場の子ウシまるちゃんと、ムクドリのりーやは、大の仲良しでした。ある日、まるちゃんは牛市につれていかれ、売られてしまいました。新しい飼い主にトラックにのせられて運ばれていく途中、衝突事故にあって、まるちゃんは逃げだしました。そこへ、さがしながら追ってきたムクドリのりーやが飛んできました……。牧場を舞台にした別れと再会の物語。

「こどものとも」228号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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ねずみのおいしゃさま

1974年12月号
041006

なかがわまさふみ さく やまわきゆりこ え

大雪の晩、ねずみのお医者様は、風邪をひいたりすのぼうやの家へ往診にいくことになりました。ところが、乗っていたスクーターに雪がつまって立ち往生、近くにあったかえるの家へ避難しましたが、そこでうっかり寝入ってしまい……。 「こどものとも」11号のお話に、新たに山脇百合子が絵を描いた絵本です。

「普及版こどものとも」1974年12月号
19×26cm 28ページ 当時の定価130円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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おなかのかわ

1975年2月号
04-1007.jpg

瀬田貞二 再話 村山知義 絵

ねことおうむは相談して、毎日かわるがわる相手をよんでごちそうすることにしました。ところがよくばりなねこは、おうむが出したごちそうを二人分全部たいらげたあげく、おうむも、おばあさん、ろば、王様の行列まで、まるのみにしてしまいます……。 「こどものとも」32号のお話を瀬田貞二による再話に変更し、絵も村山知義が描きなおした新版です。

「普及版こどものとも」1975年2月号
26×19cm 28ページ 当時の定価130円

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2005/11/04

<作家インタビュー>『やっぱりおおかみ』が生まれた日  佐々木マキ

 僕が作った初めての絵本で、絵本というものがどういうものか、ほとんど知らなかったんです。それまで僕、マンガ描いてましたんでね。絵本を描きたいという気持ちはあったんですが、他の方の絵本を見て勉強する、ということもなかった。絵本を知らなくて、絵本て何やってもいいんだ、ぐらいにしか思ってなかったですから。傾向と対策みたいなこと、例えば、お話の上で起承転結をつけるとかを勉強してたら、こんなふうにできたかどうか。
 おおかみを主人公にしようと決めた時点で、こんなふうに主人公がひとりぼっちのままという展開が、頭の中にあったんでしょうね。シルエットのおおかみが、仲間といっしょにたくさん暮らしてても、おもしろくも何ともないですから(笑)。異質な、というか場違いな感じが、シルエットにすることによって絵の上でもかなり出てると思います。

 湿ってるとかいうのが、自分でいやなんですね。もし、この絵本でも、描き手がもっとこのおおかみに感情移入してたら、それこそ、いやーな絵本になってたと思いますけれど。描いてる人が、かなりこのおおかみをつきはなしているんですね。
 僕、自分のことを本当はセンチメンタルだと思ってるんです。自分というものをそんな形で出しはじめたら、とめどなくなるような気がして。よく自己表現ていいますけど、自己表現て何かなあって思います。そんなに表現するほど、自己ってたいしたもんだろうかって。自分ではなく作品。見ていただくもの。平たくいえば見せものですよね。それに徹した方が、エンターテインメントとして上質じゃないかっていう気は、昔からしています。
 自分ていうのは、どんなに隠しても、作品に出てくるものですから。それで十分じゃないかと。
 
 子どもの時、文字が読める前から、マンガを見てました。貸本マンガというのが盛んで、各町内に貸本屋さんがあるんですね。近所の子どもどうしで、それぞれ借りてきたものを回し読みしてましたから、ものすごい効率、たいへんな読書量ですよね(笑)。
 やっぱり、手塚治虫はすごいと思ってました。それから杉浦茂。杉浦さんこそ、見せものに徹した人でしたね。ただもう、目の前の子どもをおもしろがらせたいって思いで。それが思いだけでなく、成功している。
 杉浦さんのマンガを見ると、お話なんかどうでもよくなるんですよね。しり切れとんぼみたいに終わることもあるんですけど、まあそんなことどうでもよくて。1コマ1コマが本当におもしろくて。あんなに子どもを幸せな気分にしたマンガ家ってのは、いなかったんじゃないでしょうか。
 それに比べれば、手塚さんのマンガには暗くて難しいところもあるし。やっぱり、大きなテーマ、みたいものがありますしね。……うん、杉浦さん、何もなかった(笑)
  (「こどものとも年中向き」2000年11月号折込付録より一部省略して再録)

※杉浦茂の作品は、『猿飛佐助』(ちくま文庫)、『少年西遊記』『少年児雷也』(河出文庫)、『杉浦茂マンガ館(全5巻)』(筑摩書房)などでお読みいただけます。

佐々木マキ(ささき まき)
1946年、神戸市生まれ。京都市立美術大学中退。漫画家、イラストレーター、絵本作家。絵本に『やっぱり おおかみ』『くった のんだ わらった』『おばけがぞろぞろ』『ぼくとねずみの いそげ、じどうしゃ!』『まじょのかんづめ』『そらとぶテーブル』(以上、福音館書店)、「ねむいねむいねずみ」シリーズ(PHP研究所)、『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』(絵本館)など、多数がある。京都市在住。

11月 4, 2005 1973年, エッセイ | | コメント (1) | トラックバック (3)

1973(昭和48)年度にあったこと

菊田医師赤ちゃん斡旋事件:宮城県の菊田昇医師が、10年間に約100人の赤ちゃんを子どものいない夫婦に実子として善意の斡旋をしていたことが報道される。その後菊田医師は有罪となるが、この事件をきっかけに、6歳以下の養子は実子として認めるという「特別養子制度」が1987年に新設されることとなった。(4月)
春闘共闘委員会、年金改善、週休2日制など「制度的要求」を掲げ、交通ゼネスト(国労72時間ストなど)を中心に68単産310万人参加の実力行使。(4月)
米国、民主党全国委員会本部盗聴に関連したウォーターゲート事件が政治スキャンダルになる。(4月)
東京都江東区議会が杉並区のゴミの夢の島への搬入阻止を決議。このため東京都清掃局は杉並区内のゴミ収拾を中止した。都が計画していた杉並区内のゴミ焼却場建設に杉並区民が建設反対運動を行っていたため江東区が反発したもの。(5月)
日航機が日本赤軍にハイジャックされアラブ首長国連邦のドバイ空港へ着陸。3日後リビアのベンガジ空港で乗客・乗員を全員解放し、犯人5人はリビア当局に逮捕された。(7月)
金大中事件:東京を訪問していた韓国の野党・新民党代表で元大統領候補・金大中がホテルから5人の韓国人によって誘拐された。5日後ソウル市内の自宅で発見されたが、KCIAの犯行と見られ、日韓の外交問題に発展。(8月)

滋賀銀行9億円横領事件:山科支店預金係員が約6年間で9億円にのぼる業務上横領を行った疑いで指名手配され逮捕。(9月)
石油ショック: OPEC(石油輸出国機構)の原油値上げと供給量削減を受けて、メジャー(国際石油資本)各社は日本にも原油価格の30%引き上げを通告。これらの不安材料が物価の急激な上昇を招き、トイレットペーパーの買い占め騒ぎにまで発展した。(10月)
江崎玲於奈、エサキダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞。(10月)
熊本・大洋デパート火災(104人死亡、121人重軽傷、デパート火災史上最悪)(11月)
全国消費者物価、前年同月比26.3%上昇。(2月)
フイリピン・ルバング島の山中で隠れ住んでいた小野田寛郎元少尉が戦後29年ぶりに発見され、帰国。(2月)
「超能力者」ユリ・ゲラーのスプーン曲げがテレビ放映され、超能力ブーム起こる。(3月)


主なベストセラー:『日本沈没』小松左京(光文社)、『ぐうたら人間学』遠藤周作(講談社)、『にんにく健康法』渡辺正(光文社)
テレビ:『子連れ狼』(NTV)、『ドラえもん』(NTV)、『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)、『刑事コロンボ』(NHK)、『うわさのチャンネル』(NTV)、『寺内貫太郎一家』(TBS)など放送開始。
新商品:「オセロ」(ツクダオリジナル)、「カセットデンスケ」(ソニー)、「くれ竹筆ぺん」(呉竹精昇堂)、「ブルガリア・ヨーグルト」(明治乳業)、「あさげ」(永谷園)
ヒット曲:『学生街の喫茶店』ガロ、『喝采』ちあきなおみ
この年に登場したもの:プラスチック・ゴム等のゴミの分別収集(東京都清掃局)、「シルバーシート」(国鉄)

福音館書店では:月刊誌「子どもの館」創刊(6月)(1983年3月第118号をもって休刊)

11月 4, 2005 1973年, そのころあったこと | | コメント (1) | トラックバック (0)

福音館書店から(第18回)

 今週紹介する「こどものとも」1973年の4月号(205号)からは、前回の征矢清のエッセイにありましたように、本文が2場面増えて32ページ(15場面)になり、用紙も変わって、原画の再現性も格段に向上しています。
 この原画の再現性の改善については、実は製版方法においても、この年から従来の写真製版に替わり、スキャナーによって原画から色のデータを直接読み取って製版する方法がとられるようになったことが、大きな原因になっています。
 これによって、絵本の場面数や制作過程においては、現在の「こどものとも」と同じ形がほぼできあがりました。(その後にも、用紙の変更や製本方法の変更などはありますが。)

 さて定価も100円から150円に一気にあがりました。定価値上げの要因は、先に述べたような場面数や用紙の変更によるものが大きいのですが、この当時は、物価全体がたいへん勢いで上昇していったいわゆる「狂乱物価」の時代であったことは、「そのころあったこと」からもわかっていただけると思います。
 来週からも、新しい時代に入った「こどものとも」を紹介していきます。ご期待下さい。

11月 4, 2005 福音館からのお知らせ | | コメント (0) | トラックバック (0)

きいたぞ きいたぞ

1973年4月号
030205

小沢良吉 さく・え

早耳の野ウサギは「きいたぞきいたぞ」と駆けだしました。結婚式をしていたウサギの花嫁花婿も、それを見て「いったいなにがおこったの」と追いかけます。トランプをしていたイヌたちも、食事をしていたネコたちも、カエルや虫たちも、何事だろうと後を追って走りだします。いってみると、そこにはネズミの赤ちゃんが……。誕生の喜びをシンプルなストーリーで描きます。

「こどものとも」205号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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いちごばたけの ちいさなおばあさん

1973年5月号
030206

わたりむつこ さく 中谷千代子 え

いちご畑の土の中に住んでいる小さなおばあさんの仕事は、いちごに赤い色をつけることでした。ある年、春はまだなのに暖かくなって花が咲きはじめたので、おばあさんは大忙し。地中の奥深くから水を汲みあげてお日さまの光を混ぜ、石の粉を入れて赤い水を作ると、せっせといちごの実を染めていきましたが、雪が降ってきて……。身近な自然の不思議を感じさせるファンタジーです。

「こどものとも」206号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

この絵本は1983年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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おひさまを ほしがった ハヌマン

1973年6月号
030207

インドの大昔の物語「ラーマーヤナ」より A. ラマチャンドラン さく・え 松居 直 やく

風の神の子どもハヌマンは、木の間から顔を見せているお日さまのすばらしさに心を奪われ、空高く舞いあがるとお日さまに向かってどんどん近寄っていきました。驚いたお日さまが助けを呼ぶと、神々の王インドラが通りかかり、ハヌマンをうちたおしてしまいます。風の神は悲しみのあまり姿を消し、この世は空気がなくなって死の世界に……。インドの現代美術を代表する画家による絵本です。

「こどものとも」207号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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かずくんの きいろいながぐつ

1973年7月号
030208

山下明生 さく 柏村 勲 え

かずくんは浜辺で砂の船を作っていましたが、お父さんの船を迎えに港へいった間に大波がきて、煙突にした黄色い長靴を海に流されてしまいました。海に沈んだ黄色い長靴の中に、ウミウシやイセエビ、そしてタコが入りこみます。でもタコはウツボに襲われ、長靴をかぶったまま蛸壺に……。その蛸壺を引きあげたのは、かずくんのお父さんでした。海の中の世界を美しく描きます。

「こどものとも」208号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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えんにち

1973年8月号
030209

五十嵐豊子 え

神社の境内に、細い柱と板が組み立てられ、露店ができあがっていきます。綿あめ屋、金魚すくい、海ほおずき、イカ焼き、ヨーヨーつり……。境内は色鮮やかな露店でいっぱいになり、兄妹は暗くなるまで縁日を楽しんで、最後は両親と帰ります。お店とそこに集まる人たちを見ているだけで、縁日のワクワクする気分が伝わってくる、文字のない絵本です。

「こどものとも」209号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

この絵本は、こどものとも創刊50周年記念出版「こどものともセレクション」の1冊として刊行されています。

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とうだいのひまわり

1973年9月号
030210

にいざかかずお さく・え

灯台に住んでいる女の子ひろみちゃんは、袋のついた風船が落ちているのを見つけました。袋には、ひまわりの種と「大事に育ててください」という手紙が入っていました。ひろみちゃんは種を蒔き、水をやり、嵐の日にはずぶぬれになって垣根に茎を結びつけ、大切に育てました。やっと大きな花が咲いて、とれた種を、こんどは風船につけて飛ばしました。

「こどものとも」210号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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やっぱり おおかみ

1973年10月号
030211

ささきまき さく・え

ひとりぼっちのオオカミは、仲間を探して毎日うろついています。ウサギなんかいやだけど、ブタもシカもみんな仲間がいて楽しそう。自分に似た子はいないかなと探しても、誰もいません。「やっぱりおれはオオカミだもんな、オオカミとして生きるしかないよ」と思うと、ふしぎに愉快な気持ちになってくるのでした。佐々木マキの初めての絵本。斬新なテーマの意欲作です。

「こどものとも」211号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
ささきまきさんのインタビューはこちらからご覧ください。

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ババヤガーのしろいとり

1973年11月号
030212

ロシア民話 内田莉莎子 再話 佐藤忠良 画

マーシャは両親の留守中、弟のワーニャのお守りを頼まれていましたが、いいつけを守らず遊びにいっているあいだに、ワーニャを白い鳥にさらわれてしまいました。白い鳥を追いかけていったマーシャは、ペチカやりんごの木やミルクの川に助けられ、山んばババヤガーのもとから、弟を無事に救いだします。ロシアの子どもたちにはおなじみの昔話を佐藤忠良が描きました。

「こどものとも」212号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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まのいいりょうし

200号記念増刊号2
033002

瀬田貞二 再話 赤羽末吉 画

猟師は息子の七つの祝いのために、山に猟にいきました。池に13羽のカモがいて、筒がへの字に曲がった鉄砲で岸近くの1羽を撃つと、弾がジグザグに飛んでいって12羽に命中し、13羽目にも傷をおわせました。傷を負ったカモが暴れると、大きなコイがとびあがって藪に落ち、藪にいたヤマドリは首が折れて……。幸運が幸運を呼び、ごちそうをどっさり手に入れる、おめでたい昔話です。

「こどものとも」200号記念増刊号2
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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まっかっかなむすめがまどからのぞいている

1973年12月号
030213

木乃実 光 編 正田 壤 画

「なみだをながしながら だんだんちいさくなりました」答は「ろうそく」(日本)。「てあしがないのに とびらをあける」答は「かぜ」(モンゴル)。「おつきさまがおとした おひさまがそれをひろった」答は「よつゆ」(ハンガリー)。絵を見ながら答をあてる、世界のなぞなぞ17編。さて、この絵本の題名のなぞなぞの答は?

「こどものとも」213号
26×19cm 32ページ 当時の定価150円

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さらわれたりゅう

1974年1月号
030214

今昔物語より 沼野正子 さく・え

昔、ある村では日照りの夏になると、池のまわりで龍神に雨乞いのお祭りをしていました。岩山に住む天狗は、龍ばかりが奉られるのをくやしく思っていましたが、龍が小さな蛇の姿になって昼寝しているとき、トンビの姿になって、蛇をつかまえると山の岩のすきまに閉じこめてしまいました。次に天狗は、祭りをおこなっていたお坊さんをさらってきますが……。今昔物語の話をダイナミックに描きます。

「こどものとも」214号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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うおがしのあさ

1974年2月号
030215

森下 研 さく 寺戸恒晴 え

あきらの家は魚屋です。ある日あきらはお父さんに、魚河岸につれていってと頼みました。翌朝、まだまっ暗なうちに家を出て魚河岸に着いたあきらは、せりに見とれていてお父さんを見失い、迷子になってしまいました。魚を運ぶ人たちがあわただしく行きかうなかで、あきらの目からは涙があふれてきましたが……。魚河岸の活気をいきいきと伝えます。

「こどものとも」215号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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よわむしなじてんしゃ

1974年3月号
030216

岩崎京子 さく 保坂良平 え

すててあった子ども用の古自転車を、お父さんが直してきれいに赤くぬってくれました。ゆりこははりきって自転車で出かけますが、トラックがくるとよろよろ、坂道ではふらふらきいきい……自転車はこわがって、ゆりこの思い通り走りません。でも家に帰ってくると、お母さんのぐあいが悪いので、ゆりこは自転車で夕飯の買い物にいくことになりました。子どもの自立心を自転車に託して描きます。

「こどものとも」216号
19×26cm 32ページ 当時の定価150円

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ぼくのはね

1974年3月号
041005

きたむらえり さく・え

リスの“ころ”は鳥の羽を集めるのが大好き。ある天気のいい日に、集めた羽を一枚ずつ並べて干しました。ところが林に出かけて帰ってくると、干していた羽が一枚もありません。ムクドリが卵を産むために持っていったのです。ころは羽を譲ることにします。それからしばらくして、カラスがムクドリの巣を狙っているのを見たころは……。『こぐまのたろ』の作者による動物たちのドラマです。

「普及版こどものとも」1974年3月号
26×19cm 28ページ 当時の定価100円

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