2005/08/26
<作家インタビュー>『ふるやのもり』が生まれた日 田島征三
僕の、初めて出版された本ですから、よく覚えています。
この前に僕は、『しばてん』という本を作っているんです。手刷りの自費出版で。それを童話作家の今江祥智さんがたいへん気に入ってくれて、松居さん(当時の「こどものとも」編集長)のところへ連れていってくれて、見ていただいたわけです。
松居さんは、絵を評価してくださって、「こどものとも」で1冊作ることになったんです。それが、「出してあげましょう」というのではなくてね、「私とつきあってください」という言い方をなさった。僕は田舎育ちで、そういう上品な物言いには慣れていなかったから、「つきあってる間、お金とかくれるのかなあ?」と、わからなくてね(笑)。松居さんに聞きにいったんですよ。でも、「それはだめです」ってはっきりいわれて。ただ、お金に困ってるんだったら、早く出しましょう、ということになったんです。
当時僕は、平凡社の「月刊太陽」で、木下順二の民話に絵をつけるという仕事をしていて、それが出るたびに、松居さんのところに持っていってた。お金のことを聞きにいった時、ちょうど「ふるやのもり」が掲載された号を持っていったんです。それで松居さんが、「あ、ふるやのもりがいいですね。これでいきましょう」といってくれた。
この作品は、ほとんどの絵をモノクロで描いて、印刷指定で色をつけているんです。一見、土俗的な絵ですよね。だけどやろうとしていることは、デザイン的に頭の中で組み立てて、絵を描いてゆく。
描いて出る効果、というのは描いちゃえばいいわけです。でもせっかく印刷を通じて表現するんだから、描こうとしても描けないことをしたかった。それで、印刷の技術を駆使してやったんです。やりたいことをやって、満足感はありました。
「これは、子ども向きのものではない」という書評があったりして、子どもの本の現場では排斥された部分もあるけど、印象的ではあったようで、作者に会いたい、という気持になった人がずいぶんいたみたい。当時僕は、体重が48キロしかなくて、青い顔してて、ひげも生えていなかったし、ものすごく神経質で、ピリピリしてましたね。でも、会いにくる人はみんな、この本の土俗的な印象で判断して、筋骨隆々でひげぼうぼうの山男みたいなのが描いたと思ってるんですね。でも、この本は、いろいろ神経質に考えて、デザイン的な処理をしてるんですね。構図やレイアウトの面でも、大胆かつ繊細なことをやった。とにかく新しいものを作りたい、子どもの本に革命を起こさなきゃ、という気持があったから。
この本の原稿料は13万円。その年の収入はこれだけでした。
(「こどものとも年中向き」2002年10月号折込付録掲載「絵本誕生の秘密 作家訪問インタビュー」より一部を再録)
田島征三(たしま せいぞう)
1940年大阪に生まれる。高知で幼少期を過ごす。多摩美術大学図案科卒業。東京都日の出町で、ヤギやチャボを飼い畑を耕す生活をしながら絵画、版画、絵本などを創作する。1998年より伊豆に移住し、木の実との新しい出会いもあり、近年、木の実など自然の素材を使ったアートを本格的に展開している。絵本に『ちからたろう』(第2回ブラティスラヴァ世界絵本原画展金のりんご賞、ポプラ社)、『ふきまんぶく』(第5回講談社出版文化賞、偕成社)、『とべバッタ』(絵本にっぽん賞・小学館絵画賞、偕成社)、『ふるやのもり』『だいふくもち』『おじぞうさん』『ガオ』(以上、福音館書店)、『しばてん』『くさむら』(以上、偕成社)などがある。エッセイ集に『絵の中のぼくの村』(くもん出版)、『日の出の森をたすけて』(法蔵館)、『人生のお汁』(偕成社)、作品集『きみはナニを探してる?』(アートン)などがある。
8月 26, 2005 エッセイ1964年 | Permalink
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1964(昭和39)年度にあったこと
東京上野の国立西洋美術館で「ミロのビーナス展」を開催(フランス国外で初めての公開、京都へ巡回、計172万人動員)(4月)
「新潟地震」(M7.5)により、新潟市を中心に死者26人の他、地盤の液状化による建物の倒壊や、石油タンクの爆発炎上など大きな被害。(6月)
アメリカ、人種差別禁止の公民権法成立。(7月)
アメリカ、トンキン湾で駆逐艦が北ベトナム艇により魚雷攻撃されたとして、北ベトナムへの報復爆撃。(ベトナム戦争開始)(8月)
東京、水不足が深刻化し、都が17の区で1日15時間 断水の給水制限を実施。(8月)
王貞治がホームラン55本の日本新記録を樹立。(9月)
東海道新幹線(東京−新大阪)開業(着工以来5年半、総工費3800億円。在来線の6時間30分を2時間30分も短縮する4時間で東京と大阪を結ぶ)(10月)
第18回オリンピック東京大会開催。94ヶ国から5586人参加。女子体操のチャスラフスカ(チェコ)やマラソンのアベベ(エチオピア)などが活躍。日本は三宅義信(重量挙げ)、遠藤幸雄(体操)、女子バレーなど16種目に優勝。(10月)
中国、初の原爆実験(10月)
米原子力潜水艦、佐世保入港。抗議デモ、警官隊と衝突。(11月)
三矢研究事件(社会党が衆議院で、国家総動員体制計画などを含めた防衛庁の秘密文書(三矢研究)を軍事クーデターを企図したものではないかと追及)(2月)
国立科学博物館が沖縄西表島の山猫を新種と鑑定し「イリオモテヤマネコ」と命名。(3月)
主なベストセラー:『愛と死を見つめて』河野実・大島みち子(大和書房)、『日本の文学』(中央公論社)
テレビ:『木島則夫モーニングショー』(NET(現テレビ朝日))、『ひょっこりひょうたん島』(NHK)、『逃亡者』(TBS)、『題名のない音楽会』(東京12チャンネル(現テレビ東京)、1966年4月よりNET(現テレビ朝日)に移行)、『ミュージックフェア』(フジテレビ)、『ウルトラQ』(TBS)など放送開始。
新商品:「アコーデオンカーテン」(立川ブラインド工業)、「ラジアルタイヤ」(ブリヂストン)、「ワンカップ大関」(大関酒造)、「クリネックスティシュー」(十條キンバリー)
ヒット曲:青山和子「愛と死をみつめて」、三波春夫「東京五輪音頭」、都はるみ「アンコ椿は恋の花」
この年登場したもの:「ウールマーク」(国際羊毛事務局)
福音館書店では:「子どもがはじめてであう絵本(ブルーナの絵本)」刊行開始。
8月 26, 2005 1964年そのころあったこと | Permalink
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福音館書店から(第9回)
2週間のご無沙汰でございました。今年は関東地方が台風の当たり年のようで、昨夜は豪雨が通り抜けていきましたが、皆様はいかがおすごしでしょうか。
「こどものとも」バックナンバーの紹介も、いよいよ100号を越えました。100号までの復刻版のセットは、9月8日(木)出荷開始となります。ホームページでのご案内が遅れて申し訳ありませんが、パンフレットは無料でお送りしておりますので、どうぞご利用下さい。
お気づきかと思いますが、101号からの表紙画像は、かなり色の悪いものになっています。100号までは復刻版の表紙を使用して画像をとったのですが、101号からは、変色してしまった資料用の原本を使用せざるをえませんでした。
40年の時の流れを感じていただくということで、どうぞご容赦ください。
8月 26, 2005 福音館からのお知らせ | Permalink
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そらいろのたね
1964年4月号

なかがわりえこ 文 おおむらゆりこ 絵
ゆうじが模型飛行機と交換にきつねからもらった空色の種を、庭にうめて水をかけると、小さな空色の家がはえてきました。空色の家は少しずつ大きくなり、最初はひよこやねこが、そのうち友だちや象の親子もやってきて家に入りました。やがて森じゅうの動物が入れるくらいに大きくなったとき、そこへやってきたきつねは……。「ぐりとぐら」のコンビのもう一つの大人気絵本です。
「こどものとも」97号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1967年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
8月 26, 2005 1964年「こどものとも」バックナンバー | Permalink
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かばくんのふね
1964年5月号

岸田衿子 さく 中谷千代子 え
ぷつん、ぽとん、ぽしゃ。動物園にどんどん雨が降って、洪水になりました。キリンもカンガルーも小さい動物たちも、子どもをつれて、かばくんに乗せてもらおうとやってきました。かばくんは背中に動物たちを乗せて、安全な場所に運びます。やがてお天気になって……。雨の動物園の佇まいが美しい、『かばくん』の第2弾。
「こどものとも」98号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1990年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
8月 26, 2005 1964年「こどものとも」バックナンバー | Permalink
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おおきくなるの
1964年6月号

ほりうちせいいち さくとえ
小さいときの靴下、もうはけない。お姉さんの帽子、まだぶかぶか。わたしはみっつ。1,2,3,4……数えられるよ。花の種がどうなるのか知ってるよ。けむしが大きくなるとちょうちょうになるのも知ってるよ。これからどんどん大きくなるの。そうして何になろうかな……。“おおきくなる”ということをさまざまな面でとらえ構成した絵本。
「こどものとも」99号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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ようちゃんともぐら
1964年7月号

石井桃子 さく 熊谷元一 え
ようちゃんは、猫のとらがくわえてきた小さなころころとしたけものを、煮干しと交換にとらから取りあげると、お父さんとお母さんの働いている畑にとんでいきました。ようちゃんは自分で飼うと言いはりますが、お父さんに、もぐらは土の外に出ると死んでしまうと諭されて、畑の土の中に入れてやるのでした。山村の生活感あふれる絵本。
「こどものとも」100号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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しょうぼうてい しゅつどうせよ
1964年8月号

渡辺茂男 さく 柳原良平 え
港は船がいっぱい。貨物船、タンカー、タグボートやモーターボート。船が衝突、けが人も出た。そら、救助艇の出動だ……。「火災あり、援助頼む!」。貨物船からの要請で消防艇が出動。火を消しながら船にたまった水をくみ出す、困難な消火活動が続く。港の安全のために活躍する人々と船の姿を、きびきびした文章と明快な絵で描いた楽しい絵本。
「こどものとも」101号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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ばけくらべ
1964年9月号

松谷みよ子 さく 瀬川康男 え
昔きつねとたぬきはどちらも化けるのが得意だったので、化けくらべをすることになりました。たぬきは仲間を集めて花嫁行列に化けましたが、お宮の前で、きつねの化けたまんじゅうにとびついて、化けの皮がはがれ大失敗。今に見ておれと、たぬきたちは知恵を絞って、きつねを街道の松並木のところへ呼び出すと……。愉快なお話をダイナミックな絵で描いた絵本。
「こどものとも」102号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1989年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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うみからきた ちいさなひと
1964年10月号

瀬田貞二 さく 寺島龍一 え
昔々、とよあしはらの国造りに励む“おおくにぬし”という神様のところへ、海からあけびの舟に乗って“すくなひこな”という小さな小さな神様がやって来ました。おおくにぬしは狩りや釣りの技比べを挑みますが、笛や歌、琴を奏でて動物を集めてしまうすくなひこなにはかないません。やがて二人の神は協力して国造りを進めることに……。国曳きの説話を美しい物語として蘇らせた絵本。
「こどものとも」103号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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たからさがし
1964年11月号

なかがわりえこ と おおむらゆりこ
ゆうじとうさぎのギックは、原っぱで同時にすばらしい棒を見つけました。二人は棒を取り合い、かけっこや相撲や幅跳びで決めようとしますが、なかなか勝負がつきません。そこでうさぎのおばあちゃんに決めてもらおうと家に行くと、宝探しをしてごらんといわれます。二人がいっしょにつかんで持って帰った棒を、おばあちゃんは……。『そらいろのたね』に続くゆうじの絵本。
「こどものとも」104号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1994年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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クリスマスのほし
1964年12月号

上沢謙二 案 富山妙子 画
あと10日のうちに金脈が見つからなければ閉じられてしまう鉱山で、鉱夫たちは困惑していましたが、子どものカールたちはクリスマスには大きな星が出て、いいことが起こると信じていました。10日目、大きな星の下にある厩に行ってみると、カールのお母さんに赤ちゃんが生まれていました。その時、お父さんがやってきて、金が見つかったという知らせを……。静かな感動を呼ぶ絵本。
「こどものとも」105号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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ふるやのもり
1965年1月号

瀬田貞二 再話 田島征三 画
じいさんとばあさんが育てている子馬をねらって、泥棒と狼は、それぞれ厩に忍びこんでかくれていました。じいさんとばあさんが「この世で一番怖いのは、泥棒よりも、狼よりも“ふるやのもり”だ」と話しているのを聞いて、泥棒と狼は、どんな化け物だろうと震えていると、そのうち雨が降ってきて古い家のあちこちで雨漏りしてきて……。田島征三のデビュー作となった昔話絵本。
「こどものとも」106号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1969年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
田島征三さんのインタビューはこちらから。
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きんいろのつののしか
1965年2月号

安藤美紀夫 さく 吉井 忠 え
北の森に住むエゾシカの中に一頭だけ金色の角を持つシカ“にさた”がいました。にさたは、その角の不思議な光で、狼や鷲などを遠ざけ、シカの群れを守っていたのですが、仲間からは気味悪がられ嫌われていました。ただ娘のシカ“うぱす”だけが、にさたの不思議な力を感じていました。山火事の日も吹雪の日も、にさたは仲間を助け、導いたのです。美しく厳しい自然のドラマ。
「こどものとも」107号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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まいごのちろ
1965年3月号

中谷千代子 さく・え
犬のちろは、トラックの荷台に乗せられて、かっちゃんたちの買い物についていくことになりました。ところが横断歩道の前で車が止まった時、ちろは荷台から降りてしまい、迷子になってしまいました。自動車をよけたり、歩道橋をのぼったり、ちろはだんだん心細くなってきましたが、出会った犬に聞いて、やっと見覚えのある通りに……。『かばくん』の画家の創作絵本。
「こどものとも」108号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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2005/08/12
『ぐりとぐら』を描いた頃のこと 山脇百合子
高校三年生の秋から、「母の友」に一年間連載の絵物語の絵を描きました。それが福音館とのお付き合いのはじまりです。それは「赤組さん青組さん」(松葉重庸作1960年4月号〜1961年3月号)という題で、担当の編集者は吉田宏さんでした。「赤組さん青組さん」が終わってからも時々、童話のカットや特集記事のカットを「母の友」に描いていました。ある時吉田さんが、すっかりにこにこしながらこう言ったのです。
「いいこと教えてあげる。あのね、松居さんが大村さん(わたしの旧姓です)にそのうち絵本を描いてもらおうといってましたよ」
私はびっくりしてしまいました。本当でしょうか。絵本を描くなんて私にできるのでしょうか。私にそんな資格はない、そんな大それたこと、夢にも思わない、というのが私の感想でした。それに私は一瞬のうちに、妹が小さい頃見ていた絵本を思いうかべて、少々怯えたんじゃないかと思います。鎧甲に身を固めた武者が華麗な馬に跨っている姿。美しい柄の着物を何枚も重ねている奥方とお付きの老女。絵本を描く人はああいうのが描けないといけないのではないだろうか、って。ですから「わー、すごい。いつ?」などというかわりに「そう!?」程度の返事だったのです。(さぞ嬉しそうな顔をしていたことでしょうけれど)でも、その吉田さんの言葉を、こうやって今も思い出すのですから、よほど思いがけない印象深いことだったのでしょう。
そのうち1963年に姉、中川李枝子の童話「たまご」が「母の友」に載って、その時私がカットを描きました。それが半年後に絵本『ぐりとぐら』になって出版されたのです。いよいよ絵本を描かせてもらえるのだとなって、どう思ったのかなどは全然おぼえていません。武者も奥方も登場しないので、心配なことは何一つなかったのでしょうね!
ぐりとぐらには「たまご」のとき会っていますから、初対面ではありません。私のデザインしたズボンとぼうしの二人。「たまご」のカットとさし絵は、北隆館の、あの頃の「色なし」動物図鑑の絵を参考にして描きました。でも絵本一冊分描くとなると色なし動物図鑑の正しい姿勢の野ねずみの絵一枚では、とても足りなくて困ってしまいました。それで薮内正幸さんが、上野の科学博物館の今泉吉典先生の研究室に連れて行って下さったのです。今泉先生は日本一の、もぐらとねずみの専門家なのです! 薮内さんと今泉先生のおかげで、野ねずみの問題は解決しました。
夏休みに家の「子ども部屋」で自分の勉強机に紙をひろげて描いていました。近所の女の子が姉妹二人して庭で遊んでいたのですが、窓からのぞきこんでいました。あの二人は覚えているかしら、十才と十二才くらいでした。私は大勢の動物がカステラが焼けるのを待っているところを描いていました。気に入らなくて、あとで描きなおしたのです。見られていると描きにくかったーと思いながら。
絵本の中で下をむいてあちこちに咲いている花にはモデルがあります。ほたるぶくろです。五年生の時はじめて見ました。芝畑のふちで。愛らしい様子に胸がいっぱいになりました。
多い時には机を四つも並べていた「子ども部屋」だの、高井戸の井の頭線を見下ろすなだらかな芝畑のふちのほたるぶくろだの、絵が出来ると一番に、母に見せていたことだの、懐かしいことがいろいろと思い出されます。
これがはじめての絵本『ぐりとぐら』の絵を描いた頃のことです。
(「こどものとも」1997年11月号(500号)折込付録より再録)
山脇百合子(やまわき ゆりこ)(旧姓 大村(おおむら))
東京に生まれた。童話『いやいやえん』『かえるのエルタ』『らいおんみどりの日ようび』のさし絵、絵本『ぐりとぐら』のシリーズ、『そらいろのたね』『なぞなぞえほん』『くまさんくまさん』など、お姉さんの中川李枝子さんとのコンビの仕事が多数ある。楽しいさし絵は、日本の子どもばかりでなく、外国でも高く評価されている。東京在住。
8月 12, 2005 エッセイ1963年 | Permalink
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1963(昭和38)年度にあったこと
狭山女子高校生誘拐殺人事件(埼玉県)(5月)
横綱大鵬が史上初の6場所連続優勝達成。(5月)
黒部川第四発電所が完成。(黒四(クロヨン)ダム高さ186m長さ492m)(8月)
老人福祉法公布(7月)
日本初の高速道路「名神高速道路」栗東・尼崎間71.4kmが開通(全面開通は1965年)(7月)
アメリカ・イギリス・ソ連、部分的核実験停止条約に調印(8月)
東京池袋の西武百貨店で火災。定休日だったが、店員など7人死亡。「出火お詫び大廉売」に5万人が殺到。(8月)
東京京橋の地下鉄車内で時限爆弾が爆発、10人負傷。「草加次郎」を名乗る一連の爆弾脅迫事件の犯人の犯行と見られるが、1978年時効。(9月)
大牟田市の三井三池鉱業所三川鉱での坑道で炭塵引火による大爆発、458人死亡。(11月)
横浜市鶴見の東海道線で二重衝突事故。161人死亡。(三井三池炭鉱爆発事故と同日)(11月)
ケネディ米国大統領が テキサス州ダラス市内をパレード中銃撃されて死亡。翌日この映像が初の日米間テレビ宇宙中継実験で放映された。(11月)
西側諸国で初めて、フランスが中国と国交樹立。(1月)
日本で最初のビートルズのレコード「抱きしめたい」(I want to hold your hand)が東芝から発売。(2月)
カシアス・クレイ(後にモハメド・アリ)がボクシング・ヘビー級チャンピオンになる。(2月)
ライシャワー駐日米国大使、大使館前で少年に刺され重傷。(3月)
主なベストセラー:『危ない会社』占部郁美(光文社)、『女のいくさ』佐藤得二(二見書房)、『徳川家康』1〜19山岡荘八(講談社)
テレビ:『花の生涯』(NHK 大河ドラマ第1作)、『底抜け脱線ゲーム』(NTV)、『夫婦善哉』(TBS)、『アップダウンクイズ』(NET(現テレビ朝日))、『ロンパールーム』(NTV)、『七人の孫』(TBS)など放送開始。
新商品:「タッパーウェア」(日本タッパーウェア)、「かっぱえびせん」(カルビー製菓(現カルビー))
ヒット曲:舟木一夫「高校三年生」、梓みちよ「こんにちは赤ちゃん」
この年登場したもの:「横断歩道橋」(大阪駅前)、「小さな親切運動」、「列車自動停止装置(ATS)」(国鉄)、「英語検定(英検)」(日本英語検定協会)
福音館書店では:「こどものとも」72〜83号が、第10回サンケイ児童出版文化賞大賞を受賞(5月)、「世界傑作童話シリージ」刊行開始『エルマーのぼうけん』(7月)
8月 12, 2005 1963年そのころあったこと | Permalink
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福音館書店から(第8回)
いよいよ「ぐりぐら」「じぷた」の生まれた年になりました。この年の「こどものとも」は12冊中なんと7冊が、42年経った今も「こどものとも傑作集」の中で生き続けているのです。それは何より、ずっとその絵本を歓んでくれる子どもたちがいたからです。
今、私たちが出している絵本も、40年、50年後も読みつがれていくことを願って出しているわけですが、この年の作品を紹介していると、はたして「ぐりぐら」「じぷた」と同じように生き続ける作品を今、世に送り出しているのか、きびしく問われている気がします。
さて、来週は小社も夏休みということで、1週間お休みをいただいて、次回は8月26日になりますが、今後ともどうぞこのブログをお楽しみください。
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たろうのおでかけ
1963年4月号

村山桂子 さく 堀内誠一 え
たろうは、なかよしのまみちゃんの誕生日に、すみれの花とアイスクリームをもって、動物たちといっしょに出かけました。みんなはうれしくって、とっとこかけだしますが、町の中ではおじさんたちに「けがをするから、だめ!」といわれて、なかなか先を急げません。でも、原っぱにきたら、もう思いっきり……。交通ルールを教えながらも、元気いっぱいの絵本です。
「こどものとも」85号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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ちいさな ねこ
1963年5月号

石井桃子 さく 横内 襄 え
ちいさなねこが、部屋から庭におり、門を出て走っていくと、子どもにつかまえられたり、自動車にひかれそうになったり、外には危険なことがいっぱい。大きないぬに追いかけられて、木の上でないていると、お母さんねこが聞きつけて探しにきました。お母さんねこは大きないぬを追い払い……。こねこの冒険心と、お母さんといっしょにいる安心感が、子どもの心をとらえてはなさない絵本です。
「こどものとも」86号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1967年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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ふしぎな たけのこ
1963年6月号

松野正子 さく 瀬川康男 え
山奥の村に住む男の子たろが、たけのこを掘りに行くと、上着を掛けておいたたけのこが突然伸びはじめました。たろがとびつくと、たけのこはたろをのせたままぐんぐん伸びて、雲より高くなります。村の人たちは、たろを助けるために、たけのこを切り倒し、倒れたたけのこをたどっていきました。するとたろが倒れていたそばには初めて見る海が……。絵巻のように展開する絵本。
「こどものとも」87号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。瀬川康男さんはこの絵本で1967年に第1回ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)グランプリを受賞しました。
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たなばた
1963年7月号

君島久子 再話 初山 滋 画
牛飼いは年取った牛に教えられたとおりに、天の川で水浴びをしていた天女織り姫の着物をかくして、織り姫を妻にしました。二人には子どももうまれ、しあわせに暮らしていましたが、ある日、織り姫は天に連れ戻されます。牛飼いは織り姫を追いかけて、子どもをかごに入れてかつぐと、牛の皮の着物を着て天に昇ります。中国の七夕説話を幻想的な絵で描いた絵本。
「こどものとも」88号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1976年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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てじなしと こねこ
1963年8月号

クロード・岡本 さく/え
小さな村にやってきた手品師のおじいさんの練習を見ていた4ひきのこねこは、おじいさんの部屋に忍びこみ、手品の箱の中にもぐりこんで眠ってしまいました。翌日のおじいさんの手品は、箱からこねこがとびだして大失敗。次の日はハトが出るはずの帽子からこねこが出てきて、またもお客は大笑い。でも、町の劇場の人がそれを見て……。大胆なタッチの油絵で描かれた愉快な絵本。
「こどものとも」89号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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ローノと やしがに
1963年9月号

北 杜夫/さく 得田壽之/え
南の島の男の子ローノは、台風で食べるものがみんなとばされてなくなってしまったので、やしの実を取ろうと思いました。でも木登りの下手なローノは、やしがににやしの実を取ってくれと頼みます。ローノにはいじめられてばかりだったので嫌がるやしがにたちを、ローノは言葉巧みに騙してやしの木に登らせますが……。小説家北杜夫のユーモラスな絵本。
「こどものとも」90号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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しょうぼうじどうしゃ じぷた
1963年10月号

渡辺茂男 さく 山本忠敬 え
ある町の消防署に、はしご車ののっぽくん、高圧車のばんぷくん、救急車のいちもくさんがいて、火事があれば3台そろって大活躍。でももう1台のちびっこ消防車じぷたは、みんなから相手にされません。ところが山小屋で火事があり、山道を登っていけるのはじぷただけ。谷川の水を力いっぱいはきかけて火を消し、山火事になるのを防いで大活躍します。山本忠敬の乗物絵本の代表作です。
「こどものとも」91号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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いそっぷのおはなし
1963年11月号

中川正文 やく 長 新太 え
ありが、泉に落ちた時に木の葉を落として助けてくれたはとをねらう男の足を刺して、恩返しする「ありとはと」。きつねがぶどうをとろうといくら跳びあがっても届かずに、すっぱいぶどうなんかほしくなかったと負け惜しみをいう「きつねとぶどう」。その他「いぬとかげ」「ろばとおおかみ」など、数百のイソップのお話から13話を選び、長新太がそれぞれに一枚絵をつけた絵本。
「こどものとも」92号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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ぐりとぐら
1963年12月号

なかがわりえこ と おおむらゆりこ
お料理することと食べることが何より好きな野ねずみのぐりとぐらは、森で大きな卵を見つけました。目玉焼きにしようか卵焼きにしようか考えたすえ、カステラを作ることにしたぐりとぐらは、卵があまり大きくて運べないので、フライパンをもってきて料理することにしました。においにつられて森じゅうの動物たちも集まってきて……。子どもたちに圧倒的な人気のぐりとぐらの登場です。
「こどものとも」93号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1967年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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こぶじいさま
1964年1月号

松居 直 再話 赤羽末吉 画
額に大きなこぶのあるおじいさんが、山へ木を伐りにいって日が暮れてしまい、お堂で寝ていると、鬼が大勢やってきて歌い踊りはじめました。おもしろくなったおじいさんが、いっしょになって歌い踊ると、鬼たちもよろこんで、明日も来い、額のこぶは預かっておくといって、こぶをとってくれました。翌日隣のおじいさんが真似をして鬼といっしょに踊りますが……。おなじみの昔話の絵本。
「こどものとも」94号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1980年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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うみのがくたい
1964年2月号

大塚勇三 さく 丸木俊子 え
ある船の船乗りは音楽好きで、航海の間も夕方になると甲板で合奏していましたが、音楽が始まると船のまわりに鯨やイルカやたくさんの魚が集まってくるようになりました。嵐の日、船に水が流れ込んできましたが、鯨たちが支えてくれたおかげで沈まずにすみました。船乗り達はお礼に楽器を鯨や魚たちに投げてやりました。それから、そのあたりの海では……。海の煌めきの美しい絵本。
「こどものとも」95号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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ゆびっこ
1964年3月号

小野かおる さく/え
5本の指はいつもいっしょじゃつまらないと、一人ずつ別々に遊びにいくことにしました。でも、おやゆびははさみがちっとも動かせません。ひとさしゆびはピアノがうまく弾けません。なかゆびはバイバイができず、くすりゆびは力が入らず、こゆびは犬をなでられません。ゆびっこたちは心細くなって家に帰ると手袋にとびこんで……。指を主人公にした楽しい絵本。
「こどものとも」96号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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2005/08/05
「こどものとも」とわたし 松岡享子
「こどものとも」を創刊号から欠号なくもっているというのは、わたしの自慢のひとつになるだろう。今は大事を取って倉庫に預けているが、最初の十数年分は、タイトルをいってもらえば、たぶん表紙の絵も、おはなしも思い出すことができると思う。アメリカ留学から帰って、大阪市立図書館で働いていた1963年から5年にかけて、また自宅で文庫をはじめた1967年からの数年分は、毎月、子どもといっしょに届くのをたのしみに待って、取り合うようにして読んでいたので、とくに印象が強い。号数でいえば70号から100号あたり。このころは、毎号力作揃いで、また、そのころの子どもたちは、ものすごい集中力で絵本に向かっていたので、そばで見ていても、絵本と子どもが、がっぷり四つに組んで勝負している(もちろん、どれだけたのしめるかの勝負だけれども)という感じだった。「おおきなかぶ」(74号)の「うんとこしょ どっこいしょ」に嬉々として唱和していた子どもたちの声や、「かわ」(76号)の上に長時間かがみこんでいたいくつも坊主頭が、なつかしく思い出される。
絵本そのものもたのしみだったが、わたしにとって、それに劣らずたのしみだったのが折込みだった。あの小冊子に、当時は、石井桃子さん、瀬田貞二さん、渡辺茂男さんなどが、とても力のこもった文章を寄せていらっしゃって、絵本や、子どもの読書について、ずいぶん多くをここから学ばせてもらったものだ。まだ若かったわたしも紙面をいただいて、留学からの帰途、松居直さんのお供をして訪ね歩いたヨーロッパの図書館や、出版社のこと、大阪の図書館で初めて定期的におこなった「おはなしのじかん」の報告、また、我が家の文庫の子どもたちの様子などを書かせていただいた。なにもかもが上向きで、よい方へと動いている実感があったあのころのことを思うと、若いころの意欲と元気が戻ってくるようだ。
松岡享子(まつおか きょうこ)
神戸に生まれた。神戸女学院大学英文科、慶応義塾大学図書館学科を卒業ののち渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学を学び、ボルチモア市公共図書館に勤めた。帰国後、大阪市立中央図書館小中学生室に勤務。その後、自宅で家庭文庫をひらき、子どもに接しながら、児童文学の研究、翻訳、創作に従事してきたが、1974年、石井桃子氏らとともに、財団法人東京子ども図書館を設立し、現在同館理事長。創作には、絵本『おふろだいすき』(福音館書店)、童話『なぞなぞのすきな女の子』(学習研究社)、翻訳には、絵本『しろいうさぎとくろいうさぎ』、童話「パディントン」シリーズ(以上福音館書店)など、多数の作品がある。
8月 5, 2005 エッセイ1962年 | Permalink
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1962(昭和37)年度にあったこと
東京の国鉄常磐線三河島駅構内で二重衝突事故。(死者160人、重軽傷者325人の大惨事)(5月)
日ソ漁業交渉で協定成立して妥結。(5月)
ジャック・ニクラウスがプロ入り後わずか半年でゴルフ全米オープンで優勝。(8月)
王貞治が初めて1本足打法でホームランを放つ。(7月)
アルジェリアがフランスから正式に独立。(7月)
世界最大のタンカー「日章丸」(13万2334トン)進水。(7月)
中国・インド国境紛争はじまる。(7月)
マリリン・モンローが謎の急死。(8月)
原水禁世界大会でソ連の核実験をめぐって社会党と共産党が対立して原水禁運動分裂(8月)
堀江謙一青年が小型ヨットのマーメイド号で初の太平洋横断。(8月)
戦後初の国産旅客機YS11、テスト飛行成功(8月)
金田正一投手が三振奪取3514個の世界新記録を樹立。(9月)
原油など230品目の貿易自由化実施。(10月)
ファイティング原田がボクシング・フライ級で世界チャンピオンとなる。(10月)
ソ連がキューバにミサイル基地を建設していることに対し、アメリカが海上封鎖で応じ「キューバ危機」起こる。(10月)
「昭和三八年一月豪雪」が死者・不明者231人をはじめ交通マヒなど全国に被害をもたらす(1月)
吉展ちゃん誘拐事件(3月)
主なベストセラー:『易入門』黄小娥(光文社)、『愛と死のかたみ』山口清人・久代(集英社)、『野生のエルザ』ジョイ・アダムソン(文藝春秋新社)
テレビ:『ベン・ケーシー』(TBS)、『てなもんや三度笠』(TBS)、『コンバット』(TBS)、『鉄腕アトム』(フジテレビ)など放送開始。
新商品:「ランチクラッカー」(前田製菓)、「きゅうりのキューちゃん」(東海漬物)、「バイタリス」(ライオン油脂(現ライオン))、「ノーカーボン紙」(十条製紙)、「バランス型瞬間湯沸かし器」(東京ガス)、「週刊少女フレンド」(講談社)、「サインペン」(大日本文具(現ぺんてる))
ヒット曲:中尾ミエ「可愛いベビー」、弘田三枝子「バケーション」
福音館書店では:「日本傑作絵本シリーズ」刊行開始『うさぎのみみはなぜながい』(1962年7月)、「創作童話シリーズ」刊行開始『いやいやえん』(12月)
8月 5, 2005 1962年そのころあったこと | Permalink
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福音館書店から(第7回)
暑いです。夏らしい夏になりました。この季節になると、広島、長崎、終戦と、私などまだ生まれていなかったころのことが、今につながる出来事として、必ずマスメディアの話題にのぼってきます。ましてや今年は戦後60年。
そして「こどものとも」は50年。これまで初期の「こどものとも」を紹介してきましたが、「そのころあったこと」で、1950年代後半の歴史をたどってみると、自分の中でおぼろげな記憶だったものが、激動の時代の一コマであったことが再認識され、感慨深いものがあります。
「こどものとも」もこの初期の試行錯誤の時代を経て、今回ご紹介する7年目で、いよいよひとつの完成期を迎えます。この1962年度から、ページ数は28ページになり、定価も一気に倍の100円になりました。そしてこの年、『おおきなかぶ』『だいくとおにろく』『かわ』『かばくん』『ゆきむすめ』と、現在も「こどものとも傑作集」として親しまれている絵本が次々と生まれてきたのです。
どうぞ皆様も好きな絵本が生まれてきた時代に思いを馳せてみてください。
8月 5, 2005 福音館からのお知らせ | Permalink
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かもときつね
1962年4月号

ビアンキ 作 内田莉莎子 訳 山田三郎 画
秋の日、狐は旅立つ前の鴨を食べようと川へ出かけて、一羽の鴨に襲いかかりますが、羽を1本残して逃げられてしまいました。翼に傷を負った鴨は、冬をその場所で越すことになり、またも同じ狐に襲われますが、氷の穴から水中に逃げ込んで再び難を逃れます。やがて春になると新しい羽が……。『きつねとねずみ』に続くビアンキの動物物語の絵本。
「こどものとも」73号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円 (この号より28ページ定価100円になりました)
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おおきなかぶ
1962年5月号

ロシア民話 内田莉莎子 訳 佐藤忠良 画
おじいさんが、かぶをうえました。やがてとてつもなく大きく育ったかぶは、どうしても抜くことができません。おじいさんはおばあさんをよんで、いっしょに引っ張りましたが、それでもかぶはぬけません。こんどは孫をよび、次は犬をよび、猫をよび、「うんとこしょ どっこいしょ!」。それでもかぶはぬけません。ついにはねずみもよんで……。おおらかで力強いロシアの昔話の絵本。
「こどものとも」74号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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だいくとおにろく
1962年6月号

松居 直 再話 赤羽末吉 画
何度橋をかけてもたちまち流されてしまう川に、橋をかけるよう村人に依頼された大工が、川岸で思案していると、鬼が現れて、目玉とひきかえに橋をかけてやるといいます。いいかげんな返事をしていると、2日後にはもうりっぱな橋ができあがっており、鬼は目玉をよこせとせまります。「おれのなまえをあてればゆるしてやってもええぞ」と鬼がいうので、大工は……。日本の昔話の絵本。
「こどものとも」75号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1967年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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かわ
1962年7月号

加古里子 作/画
高い山の雪どけ水や、山に降った雨から生まれた小さな流れは、谷川となって山を下り、ダムに貯められて発電所で電気を起こしたり、岩を砕いて小さな石ころにしたりしながら、平野に出て、田んぼを潤し、水遊びや魚釣りの場となり、いつしか大きな川になって、最後に海へとそそぎます。一つの川をめぐる自然と人間の営みを横長の画面いっぱいに細部まで描き込んだ絵本です。
「こどものとも」76号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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あふりかのたいこ
1962年8月号

瀬田貞二 作 寺島竜一 画
太鼓が大好きな男の子タンボは、村にやってきた白人の男が無闇に動物を殺すのを見て、動物たちを遠くに逃がすように太鼓をたたいて合図を送りました。翌日から、動物が一匹も見つからなくなりましたが、一頭だけ現れた見事なインパラを、男とともに追っていくと、森の池のまわりには、命の水を飲むたくさんの動物が……。アフリカを舞台に自然への畏敬と命の尊さを描いた絵本。
「こどものとも」77号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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かばくん
1962年9月号

岸田衿子 作 中谷千代子 画
動物園に朝がきた。おきてくれ かばくん。——動物園にやってきたかめくんは、かばくん親子と水の中で遊びます。きょうは日曜日、子どもたちがたくさんやってきました。かばくんはキャベツをまるごと大きな口で食べ、ちびのかばくんとお昼寝します。やがて動物園に夜がきて……。動物園のかばの一日を簡潔な詩的な言葉と美しい絵で描いた絵本です。
「こどものとも」78号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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つきをいる
1962年10月号

中国民話 君島久子 訳 瀬川康男 画
大昔、天には太陽があるだけで、月や星はありませんでした。ある晩、とつぜん空にぎらぎら燃える月が現われ、田や畑を枯らし、人々を暑さで苦しめました。弓の名人ヤーラは、妻のニーオと力を合わせ、南山の大虎の尾の弓と、北山の鹿の角の矢を作り、山のてっぺんから月を射ます。月の模様の起源を語る中国の壮大な民話の絵本です。
「こどものとも」79号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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あかずきん
1962年11月号

グリム 原作 大塚勇三 訳 宮脇公実 画
いつも赤いずきんをかぶっている女の子、あかずきんは、病気のおばあさんに届けるお菓子と葡萄酒をもって出かけました。でも森で出会った狼がことば巧みに誘うので、お母さんの忠告を忘れて、森の奥へと花を摘みに入っていってしまいます。そのすきに狼はおばあさんの家に先回りして、おばあさんをひとのみにすると……。おなじみのグリムの昔話の絵本。
「こどものとも」80号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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てんからふってきた たまごのはなし
1962年12月号

チャペック 作 小鳥と天使のたまごの話より 三好碩也 文と画
昔、鳥は空を飛べませんでした。ある日、天からとほうもなくでっかい卵がぴかぴか光りながら降ってきたので、びっくりしてかけつけた鳥たちは、何の卵か確かめるために、卵を温めることにしました。世界中の鳥たちがかわるがわる温めると、生まれてきたのは、天使さまでした。天使はお礼に……。場面場面に世界の鳥を地域や種類毎に描き込み、その数なんと634種。
「こどものとも」81号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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おおきな かぬー
1963年1月号

大塚勇三 再話 土方久功 画
島の若者ラタはお父さんのなきがらを運ぶカヌーを作ろうと、森の中でいちばん高くそびえたっている大木を切り倒しました。けれども翌朝いってみると木は元通りに立っています。こんどは木を切ってカヌーの形にけずっておいても、翌朝にはまた元通り。ラタが夜通し見張っていると、何百何千という鳥と虫が木っ端や木くずをくわえて……。ポリネシアの民話の絵本。
「こどものとも」82号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は、こどものとも50周年記念企画「こどものとも世界昔ばなしの旅II」の1冊としてハードカバーで刊行されています。
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ゆきむすめ
1963年2月号

内田莉莎子 再話 佐藤忠良 画
子どものいないおじいさんとおばあさんが、ある冬、雪で女の子を作ると突然動きだしました。おじいさんとおばあさんは大喜びして娘としてかわいがります。でも、春がきても、娘は家の中に閉じこもって外では遊びたがりません。やがて夏になり、娘はおじいさんやおばあさんにすすめられて、女の子たちと森に遊びに出かけますが……。『おおきなかぶ』のコンビによるロシアの昔話絵本。
「こどものとも」83号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
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とんだ トロップ
1963年3月号

小野かおる 文と画
北の国に住むトロップは、夏のお祭りのとびあがり競争の練習をしますが、兄さんのように高くは跳べません。それを見ていたまほうつかいは、跳び方を教え、魔法の黄色い紐を靴に結んでやります。でも、跳ぶときに声を出すなと言われたのを忘れ、お祭りの日に跳ぶとき、大声で「ぴょーい」と言ってしまうと……。躍動感あふれる絵本。
「こどものとも」84号
19×26cm 28ページ 当時の定価100円
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