2005/12/16

<作家インタビュー>『ぽとんぽとんはなんのおと』が生まれた日    平山英三

 今から20数年前のことですが、このお話をいただいた時のことは、非常に印象深く覚えています。
 ちょうどそのころ、私は東北の沢内村というところに何年もずっと、四季を通して通い続けていたんです。そこはたいへん雪の多い村だったものですから、雪のこととか、雪国の人の暮らしを見聞きしていました。そんな時にこのお話をいただいたんですね。
 母グマと子グマの会話に登場するシーンというのは、雪国に住んでいると、春の気配を感じるころに、本当に毎日起こっている、あるいは見る、感じる、たいへんリアルなことばかりなんです。作者の神沢さんがそういうことを本当によくご存知なんだとわかって、びっくりしたのを覚えています。

 私は沢内村に通っている時に、雪の研究者の高橋喜平先生のところにいつもおじゃまして、雪のことを教えていただいていました。高橋さんは雪の先生であると同時に、クマのことについてもたいへんおくわしい方で、ツキノワグマのことも教えていただきました。ツキノワグマは冬眠中に子グマをだいたい2頭産むことが多いんだそうですね。そういう話を聞いていたものですから、この本でも、子グマが2頭というのは、すぐに発想できました。
 そのころ、もうひとり、炭焼きをしている近藤さんという人−その人はマタギ(東北地方の伝統的な狩人)なんです。7ページで木を切っている人です。−その方からも、山のことや、クマのことも教えていただいて、とても楽しんでいる時だったんです。
 村には、今はなくなったけれども、当時は茅葺きの民家があって、それをスケッチしました。茅葺きの屋根に百合が生えていて、初夏には百合の花が咲くんです。ひょっとすると木なんかも生えていて秋になると紅葉したり、すすきが穂を出したりする。春は、中に人が住んでいると屋根の方が地面よりあたたかいから、そこから緑になります。他にも、山の風景や植物をスケッチしていました。この絵本では、そういうスケッチをもとにして、描いていけばよかったのです。

 ただ、いまだにこの本を見るたびに、残念でならないんです。というのは、今、私は長野県の北部に住んでいるんですが、たいへん雪が多いので、春になると、『ぽとんぽとんはなんのおと』の世界を、本当にいつも経験していて、毎春この本のことを思い出してね、「ああ、あの場面はこういうふうにすればよかった。こっちの場面はこうすれば……」と思って、私は20何年間、心の中でこの話をまだ描き続けているんです。
 この本の絵を描いていて思ったのは、これ、春近い山のクマの親子の話ですが、これはまた、春をむかえる雪国の母と子の話でもあると思いました。冬、じーっと単調な中にいたところから、春の気配がして春が近いと思うと、気持も明るくなって、活き活きとしてきます。このお話が、雪の中の話でありながら、あたたかく感じられるのは、そういう春をむかえるときの気持が描かれているからだと、私は思います。
  (「こどものとも年中向き」2002年1月号折込付録より一部省略して再録)

平山英三(ひらやま えいぞう)
1933年愛知県生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。絵本に『とまとときゅうりさんとたまごさん』(童心社)、『ぽとんぽとんはなんのおと』(福音館書店)、奥さんの平山和子さんとの共作に、文章を担当した『おにぎり』(福音館書店)、平山和子さんの落ち葉の絵を構成した『落ち葉』(福音館書店)、さし絵に『少年動物誌』(福音館書店)、著書に『落ち葉の美術館』(桜華書林)などがある。長野県在住。

12月 16, 2005 1979年, エッセイ | | コメント (0) | トラックバック (0)

1979(昭和54)年度にあったこと

東京都中野区、教育委員準公選条例を公布・施行。(5月)
第5回先進国首脳会議を東京で開催。(東京サミット、7ヵ国の首脳とEC代表参加)(6月)
国際捕鯨委員会、母船式捕鯨の全面禁止を決議。(小型のミンククジラを除く)(7月)
東名高速道路日本坂トンネル(静岡県焼津市)事故。大型トラックなど6台が玉突き衝突し、炎上。7人が死亡し、取り残された173台が焼失。(7月)
千葉県鹿野山神野寺でトラ脱走騒動。トラ3頭が脱走し、1頭は戻ったが、2頭が山中に逃げ込み射殺される。(8月)
第35回衆議院議員選挙(少数激戦選挙、自民は無所属の追加公認により過半数維持の惨敗、共産躍進)(10月)
木曽御岳山が有史以来初めて噴火。(10月)

環境問題で開発が中断されていた南アルプススーパー林道が12年ぶりに完成。(11月)
福岡国際マラソンで瀬古利彦が2連覇、2、3位は双子の宗兄弟。(12月)
アフガニスタンでクーデター、ソ連軍介入。(12月)
自衛隊スパイ事件:自衛隊員3名がソ連大使館武官に、自衛隊の機密文書などを提供していた疑いで逮捕。(1月)
第13回冬季オリンピック・レークプラシッド(アメリカ)大会開催。日本は、70m級ジャンプで八木弘和が銀メダルを獲得。(2月)


主なベストセラー:『天中殺入門』和泉宗章(青春出版社)、『四季—奈津子』五木寛之(集英社)、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』ヴォーゲル(TBSブリタニカ)
テレビ:『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日)、『水中花』(主演 松坂慶子・TBS)、『3年B組金八先生』(TBS)、『あ・うん』(脚本 向田邦子・NHK)など放送開始。
新商品:パーソナルコンピュータ「PC−8001」(日本電気)、ヘッドホンステレオ「ウォークマン」(ソニー)、帯電防止剤「エレガード」(ライオン)、無リン合成洗剤(花王石鹸)
ヒット曲:『夢追い酒』渥美二郎、『魅せられて』ジュディ・オング、『おもいで酒』小林幸子
この年に登場したもの:野球テレビ中継での「スピードガン」(NTV)、「省エネルック」(半袖のビジネス・スーツなど)、ガソリンスタンドの日曜祝日休業(通産省の指導)、「中国産マツタケ」(東京築地の中央卸売市場)、「携帯電話」「自動車電話」(東京23区・電電公社)

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ぐりとぐらのえんそく

1979年4月号
030277

なかがわりえこ と やまわきゆりこ

ぐりとぐらは遠足にいきました。お楽しみのお弁当の時間までには、まだ間があるので、マラソンを始めましたが、落ちていた毛糸が足にからまって、転んでしまいました。毛糸を巻いて玉にしながらたどっていくと、ほどけたチョッキを着たくまさんがいました。そこでくまさんといっしょにマラソンをして戻ってくると、ちょうどお昼になったので……。ぐりとぐらの絵本の4冊目です。

「こどものとも」277号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1983年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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あさえとちいさいいもうと

1979年5月号
030278

筒井頼子 さく 林 明子 え

お母さんの留守に妹のあやちゃんと家の前で遊んでいたあさえは、あやちゃんを喜ばせようと夢中で道に絵を描いていました。ところが顔をあげると、いつのまにか、あやちゃんがいなくなっています。あさえは妹をさがして、どきどきしながら、いつもお母さんといく公園に向かって走りました。小さな子どもの心の動きを、文と絵が一体となって緊迫感をもって描きだします。

「こどものとも」278号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1982年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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クレヨンサーカスがやってきた

1979年6月号
030279

鴨居羊子 さく・え

腹ぺこでさまよっていたオオカミの子が、小さなサーカスの一座「クレヨン座」の仲間に入ることになりました。少しずつ芸を覚えますが、なかなかうまくいきません。走ることと跳ぶことなら得意なのにと思っていました。クレヨン座もようやく人気がでてきたある日、オオカミの子は舞台で大きくジャンプすると草原に向かって……。服飾デザイナーとして著名な鴨居羊子が色彩豊かに描きました。

「こどものとも」279号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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ぼくのさんりんしゃ

1979年7月号
030280

津田櫓冬 さく・え

ひろしは自転車を買ってもらったので、三輪車をゴミ置き場にすててきました。翌日、雨に打たれている三輪車を見たひろしがゴミ置き場にいくと、トカゲやカタツムリ、ネズミやモグラやイヌが次々やってきては、三輪車をゆずってくれといいます。ひろしはみんな断りましたが、最後にうなり声をたててやってきたのは……。動物たちの三輪車の使い方に想像の世界が広がります。

「こどものとも」280号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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だいちゃんとうみ

1979年8月号
030281

太田大八 さく・え

夏休み、だいちゃんは海の近くに住むいとこのこうちゃんの家に行きました。朝早く、船着き場にいって漁師のおじさんから漬け物と交換に魚やエビなどをもらいます。朝ご飯が終わると、小川でカワエビをすくい、それを餌に海に出て魚を釣り、お昼には浜辺で“みな”という貝を採って“みなめし”を炊きます。作者の子どものころの夏の海辺の生活をいきいきと描きだします。

「こどものとも」281号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1992年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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よるのびょういん

1979年9月号
030282

谷川俊太郎 作 長野重一 写真

夜になり、おなかが痛くなって高い熱の出たゆたかは、救急車で病院に運ばれました。当直の先生が素早く診察し、X線検査と血液検査がおこなわれて、虫垂炎と診断され、手術することになりました。お父さんも夜勤から駆けつけてきます。やがて手術も無事に終わりました。夜の病院で働く人々の活躍をドキュメンタリータッチで描いた写真絵本です。

「こどものとも」282号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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くさやきのうた

1979年10月号
030283

おくやまたえこ さく・え

春、カタクリの花が咲く林では草や木の芽が顔を出します。やがてタンポポの花が咲き、ミツバチが花に群がり、木の葉がぐんぐん広がるころ、キジバトの夫婦は巣をつくります。季節がめぐり、木や草が成長すると、動物や昆虫たちは木や草を巣や隠れ家にしたり、遊び場にしたり、実を採ったりして過ごします。草木や虫や小動物の姿を精確なスケッチに基づき、柔らかなタッチで描きだします。

「こどものとも」283号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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パンのかけらとちいさなあくま

1979年11月号
030284

リトアニア民話 内田莉莎子 再話 堀内誠一 画

小さな悪魔は、貧乏なきこりからパンのかけらを盗んで得意になっていましたが、大きな悪魔たちにたしなめられ、おわびに、きこりが借りた役に立たない沼地を畑に変えることにしました。小さな悪魔は、大きな木をひっこぬき、沼の水を飲みほして、見事な麦畑にします。ところが、それを見た地主が収穫した麦を全部もっていってしまったので……。知恵を働かせ富をもたらす小悪魔の昔話。

「こどものとも」284号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1992年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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ちいさなろば

1979年12月号
030285

ルース・エインワース 作 石井桃子 訳 酒井信義 画

クリスマス・イブの夜、ひとりぼっちの小さなロバのところにサンタクロースがやってきて、足を痛めたトナカイのかわりをしてほしいと頼みました。小さなロバは喜んで、1頭のトナカイに替わって橇を引き、サンタクロースが子どもたちにプレゼントを配る手伝いをしました。次の朝、小さなロバが目を覚ますと、小屋に白いロバが立っていました。一番ほしかった友だちをもらったのです。

「こどものとも」285号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は2002年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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ぬくぬく

1980年1月号
030286

天野祐吉 作 梶山俊夫 画

体じゅうに藁をまきつけた寒がりの妖怪ぬくぬくは、山に雪が降ると里にやってきて、通りかかる人に身をすり寄せてきます。ぬくぬくに出会った人は三日は寝込んでしまうのですが、ある日出会った女の子は、体をすり寄せても驚かず、にこにこついてきました。ぬくぬくは困ってしまいますが、やがて寝てしまった女の子を背負うと里に向かい……。結末は読む者の心も温かくなる物語です。

「こどものとも」286号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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ぽとんぽとんはなんのおと

1980年2月号
030287

神沢利子 さく 平山英三 え

冬ごもりの穴の中で、クマの母さんはふたごの坊やを産みました。坊やはおっぱいを飲んで少しずつ大きくなり、外から聞こえるさまざまな音は何の音とたずねます。「かーんかーん」というのは木こりが木を切る音、しーんと静かなのは雪が降っている時、「つっぴいつっぴい」は、お天気でヒガラが歌う声、そして「ぽとんぽとんってなんのおと?」それはうれしい春の兆し。

「こどものとも」287号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1985年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。
画家平山英三さんのインタビューはこちらからご覧ください。

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やこうれっしゃ

1980年3月号
030288

西村繁男 さく

寒い冬、お父さんとお母さん、男の子と赤ちゃんは、ターミナル駅から北に向かう夜行列車にのりこみます。列車が出発し、夜通し走り、朝到着するまでを、横長の画面いっぱいに、寝台車、普通車、グリーン車など各車両の中のさまざまな人々の様子とともに描いた、文字のない絵本。終着駅にはおじいさんとおばあさんが迎えにきていました。

「こどものとも」288号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1983年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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1979年

1979年度は「年中向き」の新作はありません。

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