2005/11/24

新しい物語絵本の展開(1)       時田史郎

 1972年度の回のこの欄の「『こどものとも』200号を越えて」のなかで、私の前任「こどものとも」編集長の征矢清さんは、「こどものとも」の場面数が、13場面から15場面に増えたことについて、「15場面なら15場面なりの構成がなくては絶対に緊張感を持った作品は生まれてこない」と指摘していますが、私も全く同感です。物語絵本では場面数が増えるにしたがって、よりしっかりと構成された物語が求められると思います。
 征矢さんの後任として、「こどものとも」編集長に任命された私が真っ先に考えたことも、実はこのことでした。「こどものとも」各号を企画するにあたって、まず、しっかりとした物語、テキストを手に入れなければならないということでした。
 幸いにして多くの作家の方がこの考えに共鳴してくださり、しっかりとした物語をかいてくださいました。そして画家の方もその物語にふさわしい表現となるように工夫に工夫を重ねてくださいました。
そのうちのいくつかを、ご紹介しましょう。

 まず思い出されるのは、『はじめてのおつかい』です。
 このテキストの母胎は、編集部に寄せられていた投稿作品でした。これを一読したかぎりでは、多くの投稿作品がそうであるように、作者の主人公に対する思い入れ(感情移入)が強く、悪くいえば押し付けがましく、絵本のテキストとしては不向きのように思えました。しかし、その感情移入の部分を飛ばしながら、繰返し読んでみると、過剰気味な感情表現の裏側からしっかりとした物語が浮かび上がってくるのです。しかもその物語は、ふつうのおとなたちにとっては、ありふれた子どもの日常生活のひとこまとしか見えない「はじめてのおつかい」が、子どもたちにとっては大冒険であることを見事に語っているのです。この物語は子どもたちの共感をよぶと確信できました。そこで、すぐに作者の筒井頼子さんに連絡をとり、お会いしました。そして、私たちの考えを率直に説明し、主人公に対する思いは画家の表現にゆだね、簡潔なテキストに書き直していただけないかとお願いしました。筒井さんは私たちの考え方をすぐに理解してくださり、何度も推敲して、現在刊行されているテキストにまで磨き上げてくださいました。
 絵を描いてくださった林明子さんには、すでに「かがくのとも」で2冊(『かみひこうき』1973年11月号、『しゃぼんだま』1975年4月号)の絵を担当していただいていました。その2冊の作品を通じて、子どもたちをいきいきと描く林さんの表現力については信頼していました。林さんは、この2冊の絵本を制作するにあたって、子どもたちの姿や表情をご自分の想像で描くのではなく、子どもたちが紙飛行機を作ったり飛ばしたりしている現場や、シャボン玉で遊んでいる現場に何度もでかけていってスケッチを重ね、それをベースにしながら、テキストが語る世界をより豊かにふくらませてくださいました。ですから、林さんが絵を担当してくださった2冊の「かがくのとも」は、子どもたちの真剣な表情や心から楽しんでいるときの健康なかわいらしさであふれています。
 物語絵本をお願いするのは初めてでしたが、絵本にかける林さんの思いやその制作姿勢に敬服していた私たちは、このテキストにもっとも相応しい画家として白羽の矢をたてました。幸いにして、林さんもこのテキストを気に入ってくださり、随所にユーモラスな表現を加えながら、徐々に高まっていく主人公の不安感や緊張感を、楽しく親しみやすい表現で過不足なく描いてくださいました。
 作者の筒井頼子さんとっても、画家の林明子さんにとっても、『はじめてのおつかい』は、はじめての物語絵本の制作でしたが、お二人の奇をてらわない制作態度によって、子どもの心にひびく、子どもたちの大冒険を描いた傑作が誕生しました。
 この絵本が出版されたとき、今は亡き児童文学者の瀬田貞二先生や画家の堀内誠一さんが激賞してくださったことを、昨日のことのように思いだします。そして、刊行以来、父母や先生方、何より子どもたちに愛され続けていることが、この絵本のすばらしさを物語ってくれていると思います。
(次回に続く)

時田史郎(ときた しろう)
1943年、東京に生まれた。早稲田大学卒業後、福音館書店に勤務。1975年より1983年まで「こどものとも」編集長を務める。民俗学に造詣が深く、特に、昔話と、昔話の採集・再話者であった佐々木喜善の研究をしている。絵本の再話に『うらしまたろう』(福音館書店)がある。神奈川県在住。

11月 24, 2005 1976年, エッセイ | | コメント (0) | トラックバック (0)

1976(昭和51)年度にあったこと

植村直己、グリーンランド−カナダ−アラスカの北極圏1万2000kmを16ヵ月間かけて犬ぞりによる踏破に成功。(5月)
英仏が共同開発した超音速旅客機コンコルド就航。(米欧間を4時間弱で結ぶ)(5月)
日本武道館でモハメド・アリ対アントニオ猪木の格闘技世界一決定戦が行われる。(本格的格闘シーンのないまま引き分け)(6月)
第21回オリンピック・モントリオール大会(カナダ)開催。日本は、5連覇の体操男子団体、王座を奪回した女子バレーボールなどが金メダルを獲得。また女子体操で10点満点を連発したルーマニアのコマネチが話題をさらった。(7月)
東京地検、ロッキード事件で田中角栄を逮捕。(7月)受託収賄罪・外為法違反で起訴。(8月)

ソ連空軍のミグ25戦闘機が函館空港に強行着陸。パイロットがアメリカに亡命。(9月)
川崎市議会、わが国初の環境アセスメント条例案を可決(9月)
天皇在位50年式典が日本武道館で開催される。東京・神奈川・埼玉の革新系3知事欠席。(11月)
第34回衆議院議員選挙。ロッキード選挙とよばれ、自民党過半数割れ。三木首相退陣。(12月)
青酸コーラ殺人事件:東京都港区の公衆電話ボックスに置いてあったコーラを飲んだ高校生など2名が死亡。事件は迷宮入りに。(1月)
森英恵、日本人で初めてパリにオートクチュール「ハナエ・モリ・パリ」を開店(1月)
フィギアスケート世界選手権で佐野稔が日本人初の銅メダル獲得。(3月)


主なベストセラー:『翔ぶが如く』司馬遼太郎(文藝春秋)、『限りなく透明に近いブルー』村上龍(講談社)、『不毛地帯』山崎豊子(新潮社)
テレビ:『プロ野球ニュース』(フジテレビ)、『キャンディ・キャンディ』(NET・現テレビ朝日)、『欽ちゃんのどこまでやるの』(NET・現テレビ朝日)など放送開始。
新商品:業務用カラオケ機(クラリオン)、マイコン内蔵一眼レフカメラ(キャノン)、家庭用VHSビデオデッキ(日本ビクター)、ふとん乾燥機(三菱電機)
ヒット曲:『およげ!たいやきくん』子門真人、『ビューティフル・サンデー』ダニエル・ブーン、『北の宿から』都はるみ
この年に登場したもの:「ほっかほか亭」1号店(埼玉県草加市)、禁煙車(国鉄・東海道新幹線)

福音館書店では:ノンフィクション・シリーズ「福音館日曜日文庫」刊行開始。(『TN君の伝記』『少年動物誌』『自然の教室』)(5月)

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こすずめのぼうけん

1976年4月号
030241

ルース・エインワース 作 石井桃子 訳  堀内誠一 画

子スズメはお母さんから飛び方を教わりました。羽根をぱたぱたやっているとちゃんと空中にういているので、子スズメはおもしろくなってどんどん遠くまで飛んでいきました。そのうちに羽根が痛くなったので休もうと思いましたが、ようやく見つけた巣にはカラスやヤマバトやフクロウがいて、中に入れてもらえません。やがてあたりは暗くなって……。骨格のしっかりした物語絵本です。

「こどものとも」241号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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どうぶつたちのおかいもの

1976年5月号
030242

渡辺茂男 さく 太田大八 え

動物たちが町へ買い物に行きました。チータは蝶ネクタイ、シマウマは羽の付いた帽子、ワニは柔らかいブラシとくし、カバは小さなよだれかけ、クマは大きなケーキ……。買い物を終えたみんなは、バスで動物園のカモシカの家へいきました。明日から外国の動物園で暮らすカモシカ夫婦と赤ちゃんへの、プレゼントを買ってきたのです。一軒ごとの店の佇まいと動物の表情が楽しい絵本です。

「こどものとも」242号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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たぬきのくるむら

1976年6月号
030243

岸田衿子 さく 中谷千代子 え

みねちゃんは村の杏の木に、タヌキがいるのを見つけました。やがてタヌキはみねちゃんに馴れ、置いておいたおむすびを食べるようにまでなりました。翌年、村の近くを通っていた鉄道が廃止になったので、村の人はみんな町へひっこすことになりました。夏休み、杏の実をとりに村に帰ると、杏の木にはタヌキの子がたくさんいて……。山村での動物との交流が美しい色彩で描かれます。

「こどものとも」243号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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くった のんだ わらった

1976年7月号
030244

ポーランド民話 内田莉莎子 再話 佐々木マキ 画

ヒバリの夫婦は、モグラが巣のそばを掘りかえすので、オオカミに追い払ってくれるように頼みました。オオカミが「たらふく食わせてくれたら」というので、ヒバリは村で結婚のお祝いに集まっていた人々をおびきだして、オオカミにごちそうをはらいっぱい食べさせました。ところがオオカミはこんどは「ビールを思いっきり飲ませてくれたら」というのです……。ポーランドの愉快な昔話です。

「こどものとも」244号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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ぐりとぐらのかいすいよく

1976年8月号
030245

なかがわりえこ と やまわきゆりこ

浜辺で遊んでいた野ネズミのぐりとぐらが、沖から流れてきた瓶を拾って、栓を開けてみると、中にはうみぼうずからの手紙が入っていました。手紙を見たぐりとぐらは、浮き袋をつけてうみぼうずの島までたどりつき、穴に落ちた灯台の真珠をみつけてあげました。うみぼうずはお礼に、いろいろな泳ぎ方を教えてくれます。「ぐりとぐら」の絵本の3冊目です。

「こどものとも」245号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1977年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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みっつのなぞ

1976年9月号
030246

山形の民話 武田 正 再話 平山英三 画

長者は自分の出す3つの謎を解いた男を一人娘の婿にしようと考えました。村祭りの夜、娘は山からきた一人の若者と恋に落ち、うちに連れていきました。長者はまず、蔵の中いっぱいにある鍬の数を、たばこ3服する間に答えろといいます。若者は途方にくれるますが、娘の歌が聞こえてきて……。長者の出す難題を、娘の歌の助けを借りて、知恵と勇気で解決し、幸せをつかむ昔話です。

「こどものとも」246号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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こえどまつり

1976年10月号
030247

大道あや 作

ネコのごんごんはイヌのちのび、カラスのあーよを連れ、小江戸祭りを見に出かけました。町には屋台が立ちならび、人々でにぎわっています。神主さんのあとからは御輿と、稚児さんが曳く山車が続きます。笛と太鼓の音がひっきりなしに鳴りわたります。あーよは稚児さんの花笠をくわえて飛んでいってしまいました……。古い町の華やかな祭りを色彩豊かに描いた、大道あやの第2作です。

「こどものとも」247号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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あな

1976年11月号
030248

谷川俊太郎 作 和田 誠 画

日曜日の朝、何もすることがなかったので、ひろしは穴を掘りはじめた。妹が「あたしにも掘らせて」といっても「だめ」。友だちが「何にするんだい」と聞いたら、「さあね」。穴は次第に深くなり、穴の底からいもむしがはいだしてきた。穴の底に座りこんで「これは僕の穴だ」とひろしは思う……。横長の本を縦に開く斬新なデザイン。谷川俊太郎、和田誠とも「こどものとも」初登場です。

「こどものとも」248号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1983年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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こうさぎのクリスマス

1976年12月号
030249

松野正子 さく 荻 太郎 え

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。

「こどものとも」249号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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こしおれすずめ

1977年1月号
030250

瀬田貞二 再話 瀬川康男 画

昔、あるおばあさんが、子どもの投げた石にあたって腰の折れたスズメを助け、介抱してやりました。元気になって飛びたっていったスズメはヒョウタンの種を一粒もってきました。その種をまくと、大きなヒョウタンがたくさんなり、中にはお米がぎっしりつまっていました。それを聞いた隣のおばあさんも腰折れスズメを探しますが……。宇治拾遺物語の説話をもとにしたお話です。

「こどものとも」250号
19×26cm 32ページ 当時の定価200円

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きこりとおおかみ

1977年2月号
030251

フランス民話 山口智子 再話 堀内誠一 画

ある冬、オオカミは食べ物をさがしてきこりの家に忍びこんだものの、熱いスープをかけられて、頭を大やけどして逃げていきました。1年後、きこりが森で木を切っていると頭のはげたオオカミが群れをつれてやってきました。きこりは木に登って逃げますが、オオカミは1ぴきずつ肩の上に乗って、迫ってきます。そこで、きこりは……。フランスの昔話を堀内誠一がダイナミックに描きます。

「こどものとも」251号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

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くわずにょうぼう

1977年3月号
030252

日本の昔話 稲田和子 再話 赤羽末吉 画

欲張り男のところに、よく働くが飯を食わない美しい女がやってきて女房になりました。最初は喜んだ男でしたが、ある日、蔵の米がごっそり減っているので、隠れて見ていると、女房は男の留守に米を炊き握り飯を作ると、髪をほどいて頭のてっぺんの大きな口から食べてしまいました。女の正体が鬼婆だったことを知た男は、鬼婆にとらえられ……。赤羽末吉の絵によるスリリングな昔話の絵本。

「こどものとも」252号
26×19cm 32ページ 当時の定価200円

この絵本は1980年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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1976年

1976年度は「年中向き」の新作はありません。

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