2005/07/29

横長判への展開    松居 直

 「こどものとも」が6年目に入ったころ、並行して進めていたのがアメリカの絵本の翻訳出版の企画でした。最初に候補にあがったのは、『100まんびきのねこ』と『シナの五人きょうだい』の2冊です。ともに横長の判形で、それぞれの物語の変化と連続性とに合わせた動きのあるさし絵が、絵本なればこそ語れる物語の効果を完璧に表現し、物語絵本の構成の妙とそのあるべき姿を示しています。この2冊の絵本の邦訳を再編集する経験を通して、絵本における文と絵の組合せについて多くのことを学びました。その詳しいことは『絵本の力』(岩波書店刊 河合隼雄・柳田邦男との共著)をご覧ください。
 「こどものとも」の編集が壁にぶつかり、今後の物語絵本の展開には思い切った手段方法を取る必要性を感じていた矢先でもあり、アメリカの2冊の絵本の物語る力を徹底的に分析研究しました。そうして得た結論が、横長の画面に特有の“動き”の効果です。頁を開くと大きく左右に広がる画面の視覚的な動きは、物語を語るには実に効果的で、さし絵が動き、物語のそれからそれからという展開が波のうねりのようにはずみます。そうだ! 「こどものとも」も横長にしてはと考えました。

 しかし画面を横長にすると、タテ書きの文章の入れ方がむずかしくなります。そこで思い切って、「こどものとも」を横長判にし、文章も横書きにする決断をしました。絵本の文章の横書きは前例がありません。読者の反発が予想されます。しかし物語絵本のさらなる充実と発展には、これ以外に方法はありません。
 かくて1961年7月号から、「こどものとも」をB5判・横長判で本文横書き、左開きの絵本にしました。そして第一作としての効果を強く印象づけるべく、トラックが高速で長距離を走るという乗物絵本『とらっく とらっく とらっく』を編集したのです。
 子どもに絵本を読まれる大人の方々の印象は決して良くはなかったのですが、読んでもらいながらさし絵を読み取る子どもの反響からは、とても効果的であることがわかりました。この絵本づくりから、『スーホのしろいうま』や『たろうのともだち』『3びきのくま』といった作品が生まれ、さらに翌年の増頁によるより本格的な物語絵本の企画へと発展して、『おおきなかぶ』『だいくとおにろく』『かわ』『かばくん』といった傑作を作り出すことになるのです。

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1961(昭和36)年度にあったこと

ソ連、世界初の有人宇宙飛行を「ボストーク1号」で成功。地球を1周したガガーリン少佐「地球は青かった」と語る。(4月)
米国がベトナムへゲリラ戦用特殊部隊グリーンベレーを派遣、ベトナム戦争の発端となる。(5月)
本田技研チーム、「英国マン島オートバイレース」で125cc・250cc両クラス制覇。(6月)
全国的に小児マヒが流行し、東京都は「小児マヒ対策本部」の設置を決定。(8月)
東ドイツが東西ベルリンの境界に長さ45kmにわたって鉄条網の「ベルリンの壁」を設ける。(8月)
「第二室戸台風」が近畿を中心に全国に被害(死者・不明者202人等)をもたらす。(9月)

文部省が全国学力テスト実施。(学力テストに反対する日教組は各地で反対闘争を実施し、以後1966年にテストが中止されるまで毎年混乱が続いた)(9月)
大鵬と柏戸がともに横綱に昇進し、柏鵬時代の幕開きとなる。(9月)
女子バレーボール日紡貝塚チームが、欧州遠征で24戦全勝、「東洋の魔女」と呼ばれる。(10月)
ソ連核実験の影響で、福岡での放射能雨から過去最高の放射能検出(11月)
西ドイツでサリドマイド系睡眠薬で奇形児出産が続出との発表を受け販売禁止になる。世界各国で問題になり、製造販売が中止されたが、日本では対応が遅れ1962年9月まで市販されることとなった。(11月)
精巧なニセ千円札「チ-37号」が発見され、この後63年11月までに343枚が発見されるが、結局1973年に時効が成立。(12月)
東京都が世界最初の1000万人都市となる(2月)

主なベストセラー:『英語に強くなる本』岩田一男(光文社)、『何でも見てやろう』小田実(河出書房新社)
テレビ:朝の連続テレビ小説第1作『娘と私』(NHK)、『夢であいましょう』(NHK)、『アンタッチャブル』(NET(現テレビ朝日))、『シャボン玉ホリデー』(NTV)、『七人の刑事』(KRT(現TBS))、など放送開始。
新商品:「クリープ」(森永乳業)、「サンオイル」(資生堂)、「アンネナプキン」(アンネ)、シームレスストッキング(厚木編織(現・厚木ナイロン工業))、「リポビタンD」(大正製薬)
ヒット曲:坂本九「上を向いて歩こう」、植木等「スーダラ節」、飯田久彦「ルイジアナ・ママ」
この年登場したもの:「ワンマンカー」(東急バス)、「不快指数」(気象庁)、「交通情報センター」(警視庁)

福音館書店では:「世界傑作絵本シリーズ」刊行開始。(1961年1月)、「こどものとも特製版」刊行開始(7月)(図書館用のハードカバー版を月刊誌と同時刊行。1977年3月に終了)

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いちごつみ

1961年4月号
030061

神沢利子 作 佐藤忠良 画

女の子が山でいちごをつんでいると、後ろから誰かがやってきます。さぶちゃんだと思って話しかけても、「うーふー」と答えるばかり。ふりかえると大きなクマが……。女の子は「さぶちゃんじゃなくたっていいわ」と、おいしそうないちごをすすめると、クマの差し出した大きな手を見て、こわれた自分の家の柱を建て直すよう頼みます。堂々たるクマの姿が物語をリアルに伝えます。

「こどものとも」61号
26×19cm 20ページ 当時の定価50円

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七ひきのこやぎ

1961年5月号
030062

グリム 作 瀬田貞二 訳 山田三郎 画

お母さんやぎは、森に出かける前、七ひきのこやぎに、おおかみに気をつけるようにいいました。「しゃがれごえと黒い足で、おおかみはすぐにわかるよ」と。でも、やってきたおおかみは、白墨を食べて声をきれいにし、前足に小麦粉をつけて、こやぎをだまして戸を開けさせると、六ぴきを次々食べてしまいました。おなじみのグリムの昔話の絵本。

「こどものとも」62号
26×19cm 20ページ 当時の定価50円

このグリムの昔話は、フェリクス・ホフマンの絵のものが『おおかみと七ひきのこやぎ』(瀬田貞二訳)として「世界傑作絵本シリーズ」で1967年に刊行され、現在も販売されています。

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オンロックがやってくる

1961年6月号
030063

おの・かおる 作/画

南の島に住むトコは、いつもいたずらしてばかり。ある日、油の壺をひっくりかえしたトコに、お母さんはすっかり怒って叫びました。「オンロックきておくれ!」オンロックは、いたずらっこをさらいに来る魔物です。いたずらっ子たちは力を合わせて、魔物退治の計略をめぐらします。子どもたちのいきいきとしたいたずらっ子ぶりが楽しい絵本。

「こどものとも」63号
26×19cm 20ページ 当時の定価50円

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とらっく とらっく とらっく

1961年7月号
030064

渡辺茂男 さく 山本忠敬 え

港で荷物を積んだトラックが遠い町めざして走ります。高速道路では乗用車や観光バスに、工事現場ではダンプカーやローラーに出会います。やがてタンクローリーを追い越してぐんぐんスピードをあげていったら、「しまった!」白バイに止められました。日が暮れて、山を越え、もうすぐ終点の大きな町です。スピード感あふれる車の絵本。この号から「こどものとも」は横長判になりました。

「こどものとも」64号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

この絵本は1966年に「こどものとも傑作集」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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ひとりでやまへいったケン

1961年8月号
030065

串田孫一 さく/え

友だちから弱虫とからかわれていたケンは、ひとりで山小屋へいくことにしました。夜になってようやく着いた小屋はぼろぼろで荒れていました。翌日から山での暮らしを始めたケンは、森の鳥やリス、ウサギやカエルなどの動物たちとの交流を通して心細さをのりこえ、たくましさを身につけていきます。山の随筆家・詩人串田孫一による絵本です。

「こどものとも」65号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

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3びきの くま

1961年9月号
030066

瀬田貞二 やく 山田三郎 え

大きいくまと中くらいのくまと小さいくまの3びきが散歩に出かけた留守に、くまの家にやってきた女の子は、おいてあった大きいどんぶりと中くらいのどんぶりからお粥をちょっとずつ食べ、小さいどんぶりのお粥をすっかり食べてしまいました。次に3びきの椅子にすわり、3びきのベッドで寝てみましたが、小さいベッドで眠りこんでしまい……。ロシアの昔話の絵本。

「こどものとも」66号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

この昔話については、別のロシアの絵本(バズネツォフ絵  おがさわらとよき訳)が「世界傑作絵本シリーズ」から刊行されています。

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スーホのしろいうま

1961年10月号
030067

大塚勇三 やく 赤羽末吉 え

羊飼いの子どもスーホは、生まれたばかりの子馬をひろってきて、熱心に世話をし、りっぱな白馬に育てました。ある年、王様の開いた競馬で見事一等になった白馬を、王様はスーホから取りあげてしまいます。王様から逃げ出した白馬は、兵隊の矢に瀕死の傷を負い死んでしまいました。夢の中で白馬は、自分の骨と皮と毛を使って、琴を作るようにスーホに言いました。モンゴル民話の絵本。 

「こどものとも」67号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

この絵本は、再話・絵とも全面的にかきなおして、1967年に「日本傑作絵本シリーズ」の1冊として刊行され、現在も販売されています。

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もりのでんしゃ

1961年11月号
030068

岸田衿子 さく 中谷千代子 え

森にすてられた電車がありました。最初に見つけたこぐまは蜂蜜の壺をしまう場所にし、りすは栗をしまう場所にし、そのうち森の動物たちが、電車を遊び場にするようになりました。ある大嵐の夜、動物たちが電車に逃げこんで眠っていると、元運転手さんという白いひげのおじさんが現れ、十五夜様の空に向けて電車を走らせます……。美しい幻想的な絵本です。

「こどものとも」68号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

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そりにのって

1961年12月号
030069

神沢利子 さく 丸木俊子 え

兄ちゃんにそりを貸してもらえないふみちゃんは、おじいさんに小さなそりを作ってもらいました。みんながうらやむような赤い新しいそりに乗ったふみちゃんは、ぴゅーんと原っぱをぬけ、村をぬけ、空に舞いあがると、谷底の雪の中に落ちてしまいました。そこで冬ごもりのクマに出会い、一緒にくうくう眠りました。雪の白さが目にまぶしいような絵本。

「こどものとも」69号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

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たろうのともだち

1962年1月号
030070

渡辺桂子 さく 堀内誠一 え

こおろぎが散歩していると、ひよこに会いました。ひよこはこおろぎを家来にしてしまいます。歩いていくと、こんどはねこが、ひよことこおろぎを家来にして……。最後に会ったたろうは「けらいなんていやだ。みんなともだちになったら」。そこで、みんな「ともだちだあ。なかよしだあ」。犬もねこも、ひよこもこおろぎも、たったか、たったか、わんわんわん。

「こどものとも」70号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

この絵本は「こどものとも」1967年4月号(133号)として、文・絵とも全面的にかきなおされ、この新版が「こどものとも傑作集」の1冊として1977年に刊行され、現在も販売されています。

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みつこちゃんのむら

1962年2月号
030071

熊谷元一  作/画

みつこちゃんの住む村は冬になるとあたり一面、雪でまっ白です。冬の間もみつこちゃんは、お正月にははねつきやまりつき、どんど焼きなど大忙しです。やがて学校や保育園が始まり、お誕生日には友だちをよんで、ごへいもちでお祝い。春には牛のお産、そして田んぼや畑の仕事が始まります。農村の生活を丁寧に温かい絵で描いた絵本です。

「こどものとも」71号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

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うちゅうの 7にんきょうだい

1962年3月号
030072

三好碩也 作・画

暗い宇宙の片隅に住む7人きょうだいが、もっと明るくにぎやかなところに行きたいと思い、ほうき星のばあさんにたずねました。お日さまの方にある地球がいいと聞き、7人は旅立ちます。途中には氷砂糖でできた星や、宝石の輪が付いた星などあって、そのたびにきょうだいは一人二人と減り、最後に地球にたどり着いたのは泣き虫の女の子、お月様だけでした。宇宙を舞台にしたゆかいな絵本。

「こどものとも」72号
19×26cm 20ページ 当時の定価50円

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