あの人に会いに・玖保キリコさん
母さんはカエルのケロコさん、父さんは犬のドックさんと、そして息子はブタのトンキーくん。
この家族の日常を描いた「三匹、おうちにいる」は、今年で連載5年目になります。
作者の玖保キリコさんは、現在、ロンドンで夫と子どもの3人暮らしをしています。玖保さんが帰国したタイミングをはかって、インタビューをしました。
*インタビューの最後に、すてきなプレゼントのご案内があります! お見逃しなく!!
ロンドン→東京でただいま仕事中!!
イギリスに移住したのはいつですか?
「1996年のことです。イギリス人の夫とは、彼が仕事で日本に来ていたときに友人を介して知り合って結婚したのですが、帰国することになったので一緒に行くことにしました」
日本で漫画家として活躍している最中に、海外に移住するなんて悩みませんでしたか? 漫画の連載もあるでしょうし、不都合はありませんでしたか?
「人生何とかなると思っていたので、仕事を辞めるつもりはなかったですね。ロンドンからでも、フェデックスのような国際貨物便を使えば、原稿が3日ほどで届くんです。ですから私としては、地方で生活しているのと同じではないかと思っていました。
また、日本にアシスタントを残してそこで仕上げをしたうえで出版社に持っていきますので、そんなに不便はないですね。
もちろん、発送した原稿が届かないとか、行方不明になったというアクシデントもありましたけれど、なんとかなりました。
今では、インターネットで原稿を送ることもできるので、こうなるとどこにいても問題なくやり取りができます。日本で努めていた人間が海外で暮らすとなると、仕事をやめるかどうかを決めなくちゃならないでしょうが、私の場合、こうした職業だったのでやめずにすんでラッキーだったと思っています」
日英子育て比較
現在、3人暮らしということですが、ロンドンでの子育てについてお伺いします。日本との違いを感じるようなことはありませんか?
「今、子どもは小学生ですが、スポーツデーという日本で言えば運動会のような日があります。これが日本の運動会を経験している私にはびっくりしました。とにかく日本のように行進したり、みんなの見ている前で競技するというスタイルではないんです。競技する場所がいくつかに分かれていて、それぞれ勝手に進行している。それをクラスごとに巡って参加するといった感じなので、見学する親たちも一緒に移動するんです。競技といってもスプーンレースといった当日参加すればできるようなものが多く、事前に練習することもない。もちろん高学年になると、選抜された選手による400メートル走などの競技はありますけど、のんびりしたものです。ずいぶん違うなと思いました」
お子さんがいることで、仕事に影響はありますか?
「イギリスでは、小学校在学中は大人が子どもの送り迎えをするという慣例があります。ですから私の場合は、学校が終わるので3時半には仕事をいったん中断し、再開するのは夕食後というスタイルで仕事をしています。小さいときは、ベビーシッターさんに任せて仕事をしたこともあります。日本は、子どもを預かってくれるシステムが少なくて大変ですね。イギリスでは、学校のお休みの時期に、地域の自治体が経営している場所があって、お金を出せば8時半から18時まで預かってくれる。ちょっと大きい子でもそこで遊べるので助かります」
イギリスでは、子どもの面倒を見る職業の人もいますよね。テレビに「ナニー」という専門職の人が出ていましたが、メアリーポピンズもナニーですよね。
「住み込みで子どものしつけをする人を「ナニー(nanny)」と呼び、資格を持っている人もいます。「ベビーシッター(Baby-sitter)」は、ハイティーンのアルバイトが多いですが、一時的に家に行って子どもの面倒を見る。「オペア(Au-pair)」というものもありますが、これは、イギリスに英語を勉強しに来ている若者を自宅に住まわせ、その代わりに子どもの面倒を見てもらう方法。「チャイルドマインダー(Childminder)」というのは、チャイルドマインダーに登録した人の家に子どもを連れて行って預けるシステムです。結局、私の場合は1周間のうち、ある程度長時間でレギュラーできてくれるベビーシッターにお願いしました」
イギリスにはいろいろなシステムがあるんですね。
家族なのに別々の動物?!
ところでご家族3人というと、この「三匹、おうちにいる」の一家も3人家族ですね。ところで、なぜカエルと犬とブタの家族なのでしょうか?
「動物にしたのは、人間で描くよりも生々しくなくて描きやすいと思ったからです。
カエルと犬の子どもがなぜブタなのかということは、家族のメンバーそれぞれの個性を動物にたとえたと考えてもらえば納得してもらえると思います。やんちゃな子どもを描くのに、コブタはちょうどいいキャラクターだと思って設定しました」
モデルは玖保さんのご家族ですか?
「そう言えるところもありますが、違うとも言えます。夫は動物にたとえるとすれば「バンビ」のほうが近い、でも犬にしました。私はどちらかといえば「あひる」タイプですけれど、そうなると三匹とならないで、2匹と1羽になってしまうので、カエルにしました。もともと漫画に自分の家族のことを描くつもりはありませんし、ゆるい感じで参考にしているといったところでしょう」
「そうですね。友人から聞いた話を使わせてもらったこともありますし、自分の経験から生まれたものもあります。たとえば、電車で同席した人が、自分が持ってきたのと同じお菓子を食べているので、勝手に食べられてしまったと勘違いしたという話(2006年2月号)がありますが、これは友人から聞いた話。幽霊屋敷に連れて行ったら、暗がりが怖くなってしまったという話(2008年7月号)は、ディズニーランドのフォーンテッドマンションに子どもを連れて行った経験を描きました。でも、そのまま漫画にすることは、ほとんどないと思ってほしいですね」
「三匹、おうちにいる」のケロコさんは、母親としてとても共感できる主人公ですが、ほかの作品の主人公は、どこか“わが道を行く”ようなタイプですね。主人公のキャラクターはどのように決めているのでしょうか?
「とくにねらっているわけではないんですが、気がついたらそうなっちゃうといった感じです。個性の際立ったキャラクターのほうが描きやすいんですよね。よく私は、意地悪なものを描くといわれていますが、私自身は意地悪ではありません。”こういう状況はイヤだろうな”と想像することはあるんですよ。もちろん実際にはやりませんけどね」
「三匹、おうちにいる」の今後の構想は?
「そうですね。今年度は夫婦関係を描いてみたいと思いますね。他の親たちの姿なんかも描いてみたいと思っています」
これからも楽しみにしています。
昨年、玖保さんは漫画『ヒメママ2』(マガジンハウス刊)を出版しました。
わが道を行く義母さんの姿がほほえましいこの作品を、
なんと玖保さん直筆サイン入り(しかもトンキー、ドック、ケロコさんのいずれかが描かれています!)「母の友」の読者3名様に各1冊をプレゼントします。
ご希望の方は、ハガキに「ヒメママ希望」と明記の上、
ご住所、お名前、お電話番号をお書き添えの上、5月15日(消印有効)までに
ご応募ください。当選者の発表は、本の発送をもってかえさせていただきます。
送り先
〒113−8686
東京都文京区本駒込6−6−3
福音館書店「母の友」編集部プレゼント係
*FAX(03−3942−2088)でも受け付けます。
4月 23, 2009 あの人に会いに | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
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