絵本作家の書斎・大塚勇三さん
『スーホの白い馬』をはじめ、世界各地の絵本、童話を翻訳し、日本に紹介し続けている大塚勇三さん。
1月号の「絵本作家の書斎」では、「こどものとも」1月号『コマツグミのむねはなぜあかい』で北アメリカ、チペワの人たちの民話を発表したばかりの大塚さんの書斎を訪ねました。
その才能が子どもの本の世界で開花した背景には、あの瀬田貞二さんとのふしぎな縁があったのです。
「大塚勇三さんに会いに行く」と言うと、編集部のみなが印象に残る本に『スーホの白い馬』『長くつ下のピッピ』「アンデルセンの童話」『プンクマインチャ』と別々の言語の翻訳書をあげました。
大塚さんは、いったい何カ国語を操るのだろう? と改めて驚嘆します。
そんな驚きを持ったまま、静岡県の柿畑が点在する静かな町に、大塚さんを訪ねました。
散らかすのが仕事
窓から大きな楠を望むリビングで、大塚さんとお連れ合いの道さんが、にこやかに迎えてくださいました。
もう一方の窓辺には、本棚と小さな机が置かれています。
「書斎とか、仕事場というのは特にないのです。
家じゅうが仕事場のようなもので。
その机に座って原稿を書くのは、仕事の最後の段階に、ほんの少しだけです」。
家じゅうが仕事場? いったいどういうことでしょう?
「翻訳する本の原著を読んで、その辺に寝っ転がって考えて、その本は横ちょに置いて参考文献を読んで、テレビを観てまた考えて……いったい仕事やってるんだか何やってるんだかわからない。
とにかく散らかすだけは散らかすので、それが仕事のようなものです」。
道さんもうなずきます。
「片づけようとすると、『どこに行ったかわからなくなるから手をつけちゃあいけない』と言うんです。
きちんとしたノートはどうでもよくて、小さな紙切れがとても大事だったりするから、うっかり掃除もできない」。
しかしそれも大塚さんには言い分があるようで。
「当人としては一応、了見があって、こっちに原本、そっちに参考文献、こちらには字引……と置いてある。
それに、頭ってのはうまくできているものですね。
中に材料を全部放り込んでおくと、テレビを観ていても、頭の中でいろいろなものを作っているようです。
『うまくいかないな』と思っていたところが、いつの間にかできていて、『ああ、こうすればいいのか』と思う。
何カ月か寝っ転がったりテレビを観たりしていると、頭の中で文章がまとまってきます。
そうしてはじめて字にできる」。
*この続きは、本誌をごらんください。
(写真・吉原朱美)
12月 21, 2010 今月の“立ち読み” | Permalink
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