手紙で逢いましょう
3月号の特集は、手紙です。
伝えたいことがあれば、携帯だってメールだってある時代。手を使って手紙を書くことが少なくなりました。
でも、自らの手で記した言葉だからこそ、伝わる思いもあるのではないでしょうか。
別れと出逢いの季節を前に、手紙について考えてみませんか。
読売新聞の文芸担当記者として、多くの作家とやりとりを重ねてきた尾崎真理子さんには、文章のプロ・作家がどんな手紙を書いてきたのか、うかがいました。
忘れられる手紙の時代
尾崎真理子
手紙の時代
手紙でのコミュニケーションは、1990年代の後半を境に、がっくり減りましたね。
年賀状もメールで済ます時代、一方でコミュニケーションの頻度、密度は濃くなったという調査結果もあるみたいですが、本当かな? と思ってしまいます。
昔の作家は筆まめでした。
今でも70代以上の、手紙が通信の手段として最も一般的だった時代を過ごした方にインタビューしたり、書評の記事を送りますと、丁寧なお礼状をいただきます。
50歳以下の作家の場合は、メールが多いですね。
最近、89歳になられる瀬戸内寂聴さんへの聞き書きをまとめた本を出したのですが、瀬戸内さんも、手紙、それから手記をたくさん書いた時代の作家です。
瀬戸内さんには多くの評伝作品がありますが、「本人の手紙は何と言っても一級の資料ですよ」と、よく話されます。
作家には、今も昔も味わい深い字を書く方が多く、だから生原稿が発見されると話題にもなるのですが、その筆跡の文化も消滅していきつつあります。
肉筆で原稿を書き、毎日のように手紙をやりとりしていた時代は、あきらかに人と人との関係が濃密だったと思います。
手紙が届くまでの時差も、さまざまなドラマを生んだ。
メールでのやりとりは、簡単に出せるだけに相手の遅れを許さず、どこか脅迫的な感じはしませんか。
もちろん、時代や世代は一般論で、30代でも、たとえば小澤征良さんのように筆まめな方もいます。
彼女は、メールも打つし、手紙も書く。
声で伝えたいときには電話を選ぶ。
細かく手段を使い分けられるのが今の時代なんですね。
その上で、ちゃんと気持ちを伝えたいときには、やはり、手紙ではないでしょうか。
*この続きは、本誌で。
2月 8, 2010 今月の“立ち読み” | Permalink
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