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2008年6月26日 (木)

あの人に会いに③井上文香さん[前編]

Inoueillust1 「母の友」の表紙を開くと、まず現れるのが、人気連載「母の友エッセイ」。さまざまな分野で活躍する方々による3カ月ごとのリレーエッセイです。

エッセイの内容はもちろん、その背景に描かれたやわらかな色合いの絵に心和ませている方も多いのではないでしょうか。

ブログ限定インタビュー、あの人に会いに。今回は、2005年から「母の友エッセイ」の絵を担当してくださっているイラストレーター井上文香さんに、お話をうかがいました。

(イラスト・井上文香)

パリへの逃走劇?

静かでほんわかあたたかい──絵のイメージから、井上さんもおとなしくて女性的な方だと思っていました。実際お会いしてみての第一印象も、まさにイラスト通り。しかし、どうやらそれだけではなかったみたい。まずは絵を描き始めた学生時代のことをうかがおうと思ったら……。

「美大に入ったのはいいのですが、なんと1年半くらいで中退しちゃったんです。旦那を追いかけて」

えっ? そういえば、薬指に指輪が。聞けば、同じ東京造形大学絵画科の同級生だったボーイフレンドが大学を辞めてパリで勉強をするというので、追いかけていったと言うではないですか。

Photo_2 「なんかね、亥年だからかしら(笑)。猪突猛進ってやつで、滅多に走らないんですけど、走り出すと止まらない、みたいな。お恥ずかしい」

そう言いながらうつむいて笑う井上さん。かわいらしいのに、意外と激しい一面が。

「何の準備もしないで行ったんですよ、今考えたら若いからこそできたんですね。でもそんなふうにして飛び出したのに、彼のほうは行ってみてしばらくしたら、どうも感触的に違うな、と気がついたみたいで」

結局2人で帰国を決意しますが、せめている間にヨーロッパの芸術にたくさん触れようと、フランスはもちろん、イタリア、スペイン、イギリスなどで美術館や教会巡りをしたといいます。

「まあ暴走したのは失敗だったかもしれないですけど、何も知らないうちに、予備知識なしに向こうの芸術や文化に触れられたのはよかったかなと思います。何もかもが、ドびっくりでしたから(笑)。町中でけんかしている人の多さとか、犬の糞の多さとか、あとは何と言っても教会のあり方が。仕事帰りとか買い物帰りの人が、ごく普通に歴史的建造物に立ち寄ってお祈りしていくという光景が、なんかこう、とても自然で、日本と全然違うんですよね」

その後帰国、23歳で結婚して、今年は14年目だそうです。

イラストレーターになる

結婚当初は、油絵を専門で描く夫のサポート役に徹していた井上さんですが、やはり次第に自分でも描きたい気持ちが募ってきました。

「どうも気持ちがくさくさしてきて、よくなかったみたい、雰囲気が。自分でも感じていたし、夫も『そんなんだったらやったら』と言ってくれて」

家で少しずつ絵を描くようになったものの、どうしたら仕事としてイラストが描けるようになるのかわからないでいた矢先、友人から、イラストスクール「パレットクラブ」を紹介されます。第一線で活躍するプロのイラストレーターたちから直接指導が受けられると聞き、見学くらいなら行ってみようかな」くらいの軽い気持ちで見に行くことに。

「見て帰ってくるだけにしようと思っていたのに、行ったら妙に行きたくなっちゃったんですよね(笑)。胸騒ぎというか、びびっと来ちゃったんです」

この「びびっ」がきっかけで、スクールで知り合ったアートディレクターや友人たちから少しずつ仕事が来るようになり、井上さんは次第にプロとしての道を歩むようになりました。

【プロフィール】
井上文香(いのうえふみか)
イラストレーター。1971年、東京生まれ。東京造形大学絵画科中退後、約1年間フランス滞在。パレットクラブイラストコース、イメージフォーラムアニメーションコースなど受講。主な書籍装画に『いのちの灯台─生と死に向き合った9組の親子の物語』(明石書店刊)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩﨑書店刊)など多数。「母の友」のほか、「おおきなポケット」でもイラストを連載中。
ホームページ 
http://www.cre-8.jp/i/user_page-InoueFumika.html

6月 26, 2008 あの人に会いに |

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