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2008年5月 7日 (水)

あの人に会いに②鈴木理策さん[後編]

Risaku21_2 前回、連載「空もよう」についてお話しくださった鈴木理策さんは、写真家であると同時に、美術大学の准教授でもあります。

インタビュー後編では、大学教授・鈴木理策の素顔を。

今年度、日本写真協会年度賞受賞! おめでとうございます!

初めての大学生活?

「アーティストって基本的に自分のことは詳しいけど、あまり全体のバランスを考えたりしないじゃないですか。大学でも、キャラクターの違う学生が集まっているから大変ですよ(笑)」

そう笑う鈴木さんが大学で教え始めたのは2006年。それまで他の大学や専門学校の講師をつとめたことはあったが、専任は初めて。現代美術を専門とする科の准教授として、講義やワークショップ、ゼミを通して学生に写真を教えている。

「たまたま話が来たんですよね。写真とアートの、境界線というかカテゴリーのようなものが、今どんどん曖昧になってきています。実際、自分の写真作品も現代美術の画廊で販売していますし。そういった状況を面白いな、と感じていたので、引き受けることにしました。
あと、ぼくは大学に行かなかったので、大学がどんなところかというのにも興味があって(笑)」

作らずにいられない人には勝てない

大学での仕事は面白い、と言いつつも、そこは芸術家。学生が芸術表現を大学で学ぶことについては鋭く目を光らせる。

「やっぱり表現って無理にするものじゃないじゃないですか。作品は作らずにいられないっていう人が作ればいいし、そういうものでなければ絶対に魅力をもたない。理屈や言葉で組み立てたうえに作品を作るというよりは、まずは物(作品)があって、言葉は後からついてくるものだな、と思います。

だから基本的には、勉強して何とかなるものだとは思わないんですが(笑)、大学で『知る』ことが何かのきっかけにはなる、と信じています。出合ったり知ったりした結果が自分に戻ってくる──学校がそういう場所になれば面白いと思います」

なるほど……。大学は場所、環境として芸術家を育むのですね。
 
Risaku11 自らの体験を伝える

しかし実は鈴木さん自身、コンセプトやルールにとらわれていた時期があった。

「ぼくも最初のうちは、世の中には共通の価値基準というのがあって、それをクリアすれば作品は残っていくんだ、ってすごく頭でっかちに考えていました。そういう写真を撮ってましたしね。

でもそのころは結局、鳴かず飛ばずというかんじで。それなりに玄人受けはしていたけれど、そんなに面白がられるという感じじゃなかった気がします」

転機となったのは、連続する写真で作品を作り上げる独自のスタイルを発見した、代表作『KUMANO』(光琳社出版刊)。

「『KUMANO』から、実験的に好きに撮るようになって、変わってきました。自分としてはある種の開き直りだったんですけれど、それに人が興味を持ってくれるようになって。

変な話ですよね、こちらから一生懸命アプローチを用意するよりも、そっぽむいて一人閉じてやっていたら、『何やってんの?』って友達が寄ってくるみたいで」

自身が「最初からそれができていたタイプじゃなかったんで」、物作りの苦労や流れはよくわかっているという鈴木さん。

「そういった部分では、すごく学生に伝えられるものがあるかなと思っています」
 
その後話題は「母の友」の特集記事や日本の教育、価値観についてと広がった。そのしなやかで鋭い感覚は、写真作品の印象ともつながる。

5月にはアメリカ・ニューヨークでグループ展も控えている。「空もよう」ともども、鈴木さんの今後の活躍に、注目したい。

(写真・石川直樹)

Photo_3 鈴木理策さんの写真集
『鈴木理策、熊野、雪、桜』(淡交社刊)
『SASKIA』(リトル・モア刊)

【プロフィール】
鈴木理策 (すずきりさく)
1963年、和歌山県新宮市生まれ。写真家。
東京綜合写真専門学校研究科卒業。80年代後半に渡米、旅をしながら各地を撮影。
99年、写真集『Piles of Time』で第25回木村伊兵衛賞受賞。06年に第22回東川賞国内作家賞、和歌山県文化奨励賞受賞。2007年、東京都写真美術館で個展「熊野、雪、桜」を開催。
本年3月、日本写真協会賞年度賞を受賞。現在、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科准教授、立教大学現代心理学部映像身体学科非常勤講師。
5月16日よりアメリカ・ニューヨークのInternational Center of Photography で開催される、グループ展「Heavy Light: Recent Photography and Video from Japan」に出展予定。

5月 7, 2008 あの人に会いに |

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