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2008年3月31日 (月)

あの人に会いに②鈴木理策さん[前編]

すっかりご無沙汰したブログ限定インタビュー、「あの人に会いに」。今回は、連載6年目を迎えた写真家鈴木理策さん を、東京都渋谷区の事務所に訪ねました。
 
静謐かつ鮮烈──風景を複数の写真でつながりとして表現することで知られる鈴木理策。どこまでも美しく、澄んだ空気をたたえたその作品は、見る者の心の奥にある何かを呼び起こしてやまない。

そんな日本を代表する写真家の鈴木さんが、「母の友」の人気連載「空もよう(文・中山千夏)の写真を連載開始時の2000年度から担当してくださっていることは、意外に知られていないかもしれない。

毎月、話題の時事問題に独自のユーモアと切り口で迫る「空もよう」は、中山千夏さんの文章はもちろん、千夏節を受けてひねり出された鈴木さんの写真によって、さらなる広がりを生んでいる。しかし、その舞台裏は意外とフクザツで……。

Photo_4   時間とアイデア作りのたたかい

「いやあ、毎回大変ですよね」

えっ。(凍りつく編集部)

「原稿が届くとすぐに読むんですが、アイデアが浮かぶまでが面白いなと思って保留にしていると、編集部から催促のお電話をいただいてしまって(笑)

スミマセン。その時々のトピックをなるべくホットなうちにお伝えしたいとの思いから、「空もよう」の締め切りはいつも綱渡りなので……。

「原稿の内容を具体的に絵にできるかどうかが難しいですね。ストレートに挿絵のようにしてしまっては面白くないから、読み取る余地というか、しかけを作ったほうがいいなと思って、若干ひねろうと一生懸命するんですけど」

「通じてますか?」

連載開始当初は、撮りためてあったアメリカ旅行などの写真から、内容に合ったものを選んで使っていたものの、最近は撮り下ろすことが多くなった。

「もうないんですよね、ストックが(笑)。原稿の内容も、言葉が具体的になってきたような気がするなあ」

と言いつつも、これまでの連載ページをめくりながら、次第に懐かしそうな表情に。

Photo_2 「そういえば、こういうのって読者に通じてるのかな?」

取り出したのは、中山さんが長年のファン「晴美ちゃん」の死について語った「区切り」(2008年3月号)。「晴美ちゃん」との初対面が「お荷物小荷物」というテレビドラマの公開録画だった、というくだりがあった。

「『お荷物小荷物カムイ伝』*を意識して、熊の人形にしたんですけど、通じましたかね? ぼく、中山さんがモノクロのテレビに出ているころから見ていたんです。風呂敷で登場してた印象があったので風呂敷もちらっと見せて」

あっ、本当だ。そしてこの熊の置物は、事務所の階段に置いてあったものですね。すみません……全然通じてませんでした。

そうなのだ。内容との絶妙な間合いは、映っているモノによるところが大きい。それだけに、被写体探しには苦労しているという。上野動物園にコウノトリを撮りに行ったり(06年12月号)、ボクシングゲームを締め切り前日に「どうしようもないんで」購入したり(08年2月号)。「ペコちゃんも、探しましたねぇ」(07年4月号)……。

「逆のパターンやったらどうですかね。中山さんに、まず写真渡すから原稿書いて、みたいな(笑)」

作品モードと連載モード

「うまくいったときは面白い」という「空もよう」の仕事だが、なにしろ写真家・鈴木理策の作品世界とは異なる作家とのコラボレーション。きっとモードが違いますよね。

「まったく違いますね。『空もよう』はキャッチボールです。中山さんが原稿を投げてきたら、それに返す返事を書いているみたいなもので。そのまま答えるだけじゃ面白くないから、それなりに自分で考えて返すようにしています。

自分の作品というのは自分自身がクライアントだから、一方的に外に向かって手紙を書くだけです。本当は自分に向かって書いているんですけど。

知ってます? 野球って最初は二人が仲良くキャッチボールしているところにもう一人が嫉妬して、割って入ってボールを打ったところから始まったと。寺山修司が書いているんですよ。本当かどうかわかりませんけど(笑)。

僕なんかはわりとそういうふうに線を引いて考えるタイプで、ある意味古いかもしれない。今の若い子なんかは、そんなに差はないかもしれないですよね」
 
「今の若い子」と言う鈴木さん。実は2年前より大学の専任准教授として学生を教えているのです。次回は、「鈴木先生」の素顔をお届けします。

*「お荷物小荷物・カムイ編」は、1971~72年のテレビドラマ。前年に放送された「お荷物小荷物」の続編で、ヒグマの子どもを奪還するためお手伝いとして働くアイヌの娘を中山千夏さんが演じ、話題を呼んだ。

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鈴木さんお気に入りの「空もよう」

Photo_6 2005年8月号「弱さの強さ」

「これはかなり気に入っているんですよ。長沢節さんが亡くなったときの話なんだけど、たまたま通ったこのおじさんがすっごく似てるの。知ってる人だと『えっ』となると思いますよ」

Photo_7

2004年9月号「ほんとうの現実」

「これは、近所の飲み屋の看板。偶然なんですけどね」

Photo_8 2005年3月号「スリッパにせよマサカリにせよ」

「これもすごいですよね。82歳のおばあちゃんが嫉妬して旦那を斧で……っていう事件の話なんだけど、ちょうど昔撮った写真がぴったり合って」

Photo_9 2004年5月号「オヤジの決めゼリフ」

「世の男は女性のことを働く動物くらいにしか思っていないんじゃないか、という文章に、青森で撮った犬にえさをやっているおっさんの写真を使ったんです。
ああいうのはやっぱり気が利いているな、おもしろいなあと思う(笑)」

Risaku31 【プロフィール】
鈴木理策 (すずきりさく)
1963年、和歌山県新宮市生まれ。写真家。
東京綜合写真専門学校研究科卒業。80年代後半に渡米、旅をしながら各地を撮影。
99年、写真集『Piles of Time』で第25回木村伊兵衛賞受賞。06年に第22回東川賞国内作家賞、和歌山県文化奨励賞受賞。2007年、東京都写真美術館で個展「熊野、雪、桜」を開催。
現在、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科准教授、立教大学現代心理学部映像身体学科非常勤講師。本年3月末まで、東京都庭園美術家でグループ展「建築の記憶」を開催した。
5月16日よりアメリカ・ニューヨークのInternational Center of Photography で開催される、グループ展「Heavy Light: Recent Photography and Video from Japan」に出展予定。

(写真左・石川直樹)

3月 31, 2008 あの人に会いに |

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